世界中でエネルギー資源の供給が追いつかない
再生可能エネルギーに由来する電力の供給不安もある。欧州では気候変動の影響によって風速の低下や降雨の減少が起き、風水力を用いた電力供給が減少して天然ガス需要が急増した。ロシアからの供給不安もあり、10月上旬には天然ガス価格が取引時間中に前日から3割上昇する場面もあった。天然ガスの不足によって火力発電のための原油需要も増加し、連鎖的に価格が押し上げられた。
また、米国ではワクチン接種によって経済が正常化にむかい、ガソリン需要が増えている。ただし、脱炭素を背景に金融機関が化石燃料関連事業への融資基準を厳格化したため米石油産業の供給力回復には過去以上に時間がかかる。このようにして世界経済全体でエネルギー資源の供給が需要に追いつかない状況が鮮明だ。
なぜ穀物の価格も上がっているのか
エネルギー資源に加えて、穀物の価格も上昇している。その理由の一つとして、多くの穀物は代替エネルギー源として扱われている。例えば、トウモロコシを原料にして生産されるエタノールは自動車の燃料(バイオエタノール)に使われる。ガソリンにバイオエタノールを混ぜたエタノール混合ガソリンも自動車燃料だ。原油価格が上昇するとガソリン価格は上昇し、ガソリンの代替品であるエタノールの原料であるトウモロコシなどの穀物価格も上昇する傾向にある。
中国の豚肉生産の増加も穀物価格を押し上げた。2018年夏場から中国ではアフリカ豚コレラの感染が拡大し、豚肉生産が減少した。中国政府は豚肉生産を増やすために養豚施設への投資を増やし、2020年以降は生産頭数が増加した。その結果、養豚飼料として用いられるトウモロコシ、大豆、小麦などの穀物の需要が増えた。
他方で、供給面では豪雨や干ばつ、高温など世界的な異常気象の影響によって農作物の生産に悪影響が出ている。以上より、世界全体で穀物の需給はタイト化し、価格が上昇した。