就農で誰もが抱くのは、そもそも自分に農作物が作れるかという不安です。だから、まず自分で実験してみるとよいでしょう。

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おおむね農業所得で生計が成り立っているか?

ホームセンターでピーマンの苗1本とジュースなどのスチール缶4本くらいの土を買って作ってみれば、感触を掴めます。プロ農家はひと夏に1本の苗で10キログラムのピーマンを収穫します。それを目安に、3キログラム以下はさらに修業が必要。6キログラム取れれば才能あり。9キログラムいければ即OK、と判断してください。ナス科の作物にはある程度のテクニックが必要ですから、これができれば他の作物も作れます。同じように栄養を独り占めさせた状態で米を作ってみても、指標にはなりません。

牛となると実験そのものができませんが(笑)、肉牛の場合、飼料や子牛の値段が高騰し、小売価格は下落しているので、今の時代に肉牛をやることはなかなか勧められませんね。

就農希望者にぜひ言っておきたいのが、机上の空論でもよいから、まず収支計画を立ててから専門の窓口に相談せよ、ということです。場所と作物と投資額を決め、自分なりの計画を立てます。それがなければ、相談される側もアドバイスしようがないからです。

私はシンクタンク退社後に農業を始めて約15年が経ちます。今は年平均60頭の肉牛を中心に大豆や麦も作っています。麦は、赤さび病などに気をつければ放っておいても育ちます。年収はジェットコースターみたいに上下しますが(笑)、麦は30ヘクタール程度の規模でやれば、年収1000万円に届く流通と市場が準備されています。そうした食品流通の動向もよく見て、何を手掛けるかをよく研究することです。いずれにせよ、農業には充分可能性がありますよ。

(藤野光太郎=構成 作田祥一=撮影)