このほか、在庫の評価には「後あと入先出(いれさきだし)法」という方法もあり、出光興産(現在は総平均法に変更)やヤマハ、住友化学、JFEホールディングスなどがこの方法を採用している。
「後入先出法」とは、直近で仕入れたものから先に出荷したという前提で在庫価格を評価するもの。原油価格が上昇トレンドの場合、直近に仕入れた高い在庫を売ると仮定するため、利ざやは小さくなる。逆に下落局面では安く仕入れたものを売ると仮定するため、利ざやは大きくなる。いずれにしても、仕入れ時期と販売時期のタイムラグが小さいため、売上原価が時価に近くなり、価格変動の影響を排除しやすい、という特徴がある。
しかし、過去に仕入れた在庫がいつまでも残るという問題もある。90円で仕入れた在庫が残り、時価が110円になれば含み益があるが、「低価法」では評価益が生じない。含み益が利益になるのは売ったときであり、そのときまで利益が繰り延べられる、という見方もできる。
後入先出法は国際会計基準(IFRS)では認められておらず、日本でも11年3月期からは廃止される。在庫の評価方法が統一されることで、同業他社との比較はしやすくなるだろう。
とはいえ、仕入れ価格がドラスティックに変動する業種では、在庫価格が業績に大きく影響することは確か。そのため、新日石や出光では、在庫の影響による数値と在庫の影響を排除した数値を明らかにするなど、決算資料にも工夫がみられる。投資家にも、「数字の裏側を見抜く力」が一段と必要になりそうだ。