セカンドキャリアに必要なスキルとは?

順調にセカンドキャリアを築けたとしても、そこには厳然とした格差もある。

例えば、女子マラソンの世界。五輪で2つのメダル(銀・銅)を獲得した有森裕子、同金メダリストである高橋尚子と野口みずき。この3人が解説を担当するテレビのマラソン生中継では、キャリアで劣る千葉真子がバイクレポートにまわることが多い。また、女子マラソンの創成期に活躍した増田明美も五輪の実績では後輩たちにはかなわない。そのため“細かすぎる解説”に力を注いで存在感をアピールしている。

タレントとして活躍していくのも簡単ではない。前述の斎藤祐樹の再就職先がどこになるかはわからないが、元プロ野球選手でいえば、長嶋一茂が売れっ子のひとりでタレント、コメンテーターとしての地位を確立済だ。ただ、選手としてどんなに活躍しても、タレントとして生きていくのは至難の業だ。

サッカー界の勝ち組は内田篤人だろうか。端正なルックスもあり現役時代から人気は抜群だった。現在は『報道ステーション』のスポーツコーナーでキャスターを務めるだけでなく、CMで見る機会も多い。サッカー女子の丸山桂里奈もキャラクターが受けて、バラエティ番組に引っ張りだこだ。だが、内田も丸山も、テレビ出演者としての賞味期限がどれくらいあるかは不透明だ。

メダリストとはいえ左団扇で暮らすというのは難しい

一方、五輪で3つの金メダルを獲得して、国民栄誉賞も受賞した女子レスリングの吉田沙保里は受難のときを迎えつつある。現役引退後から約2年半務めてきた朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)のレギュラーを9月いっぱいで卒業。テレビ番組出演も少なくっている印象がある。

テレビ番組の出演料は一般的なビジネスパーソンの日給と比較すれば、かなり高額だ。しかし、よほどの売れっ子にならない限り、コンスタントにテレビ番組の仕事が入るわけではない。単価は低くてもいいので、毎月、ある程度の金額が入ってくるビジネスプランでないと、メダリストとはいえ左団扇で暮らすというのは難しいだろう。

さらに言えば、日本人アスリートはプロ選手よりも、実業団というカテゴリーに所属するケースが多い。実業団ランナーの場合、朝練習をこなして、9時から14時くらいまで勤務。その後、練習というスケジュールが一般的だ。大手自動車メーカーで走り続けた元選手を取材したときに、こんなことを話していた。

「仕事といっても雑用が大半です。試合や合宿で1年のうち半分近くはいないので、重要な仕事に携わる機会はほとんどありません。現役を退いた後、仕事を覚えるのが大変でした」

なかにはスムーズに出世する元選手もいるが、多くはセカンドキャリアに苦労しているようだ。かといって、大手自動車メーカーの場合、給料も恵まれているため、退社する元選手はほとんどいないという。生活のために、どこかで折り合いをつけてやっているようだ。

現役アスリートは、「競技生活を1年長くやることは、セカンドキャリアで1年遅れること」を知っておいたほうがいいだろう。

危ういのが現在の人気や注目度が一生続くと思っているアスリートだ。大会が行われる度に新たなスターが誕生する。過去の栄光は自然とファンの記憶からも薄れてしまう。アクションを起こし続けることが大切になってくる。

写真=iStock.com/z_wei
※写真はイメージです

指導者、解説者、タレント、会社員、転職、起業、フリーランス。どの道に進んだとしても、楽なものはない。アスリートとして成功を収めたときのように、セカンドキャリアでも一段ずつ階段を上っていくしかない。

関連記事
東京随一の"セレブ通り"を走る富裕層が「テスラやレクサス」を選ばないワケ
「お金が貯まらない人は、休日によく出かける」1億円貯まる人はめったに行かない"ある場所"
カワサキの140万円の新型バイクが「5000キロ走行、200万円」でも飛ぶように売れるワケ
甲子園ではライバルだったのに…斎藤佑樹と田中将大に圧倒的格差が生まれた根本原因
「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する"セックス依存症"の怖さ