では、職場環境はどうか。アンケートによると、職場では世代間の不和が目立ち、上司は「若手の心構え」に、部下は「上司の人間性」に疑問を持つ傾向が見られた(図5)。また世代別では、若い世代ほどうつの経験が多かった(図6)。前出の小宮氏は、「これらは職場のIT化が原因」と分析する。

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図5/図6

「コミュニケーションには意味と意識の2種類があります。IT化により業務報告などの“意味”は効率的に伝達できますが、それゆえに作業量が増えて、“意識”の共有まで手が回らなくなっています。一昔前は上司が部下を気にかけて飲みに誘うシーンをよく見ましたが、いま上司は部下との意識の共有より、メールの処理で精一杯。世代間で不和が目立ち、とくに若手が思い悩むのも当然です」

ただ、職場の満足度は高かった。満足度60%以上と回答した人は、最も少ない年収500万円以下で44.7%。1500万円以上では8割近い(図7)。年収が高いほど満足度が高いのは自然に見えるが、小宮氏は警鐘を鳴らす。

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図5/図6

「業績給・成果主義の浸透で、稼ぐこと自体が目的化している恐れがあります。本来、お金は目標であって目的ではない。“お金の猛者”ではなく、まわりやお客様に喜ばれることなど、いい仕事をすることを目的とする“仕事の猛者”にならないと、いつか必ず反動がやってきます。持続的な満足感のためには、仕事を褒めるという日本企業にあった文化をもう一度見つめ直すべき。企業のトップには、そのあたりを考慮して制度設計してほしいですね」

今回のアンケートでは、社長への信頼度と職場の満足度に非常に強い相関があることもわかった(図8)。従業員にとって、いかに働きがいのある職場をつくるか。それがマネジメント層に求められる10年の重要なテーマかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

小宮一慶●経営コンサルタント
1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院留学(MBA)。96年小宮コンサルタンツを設立。著書に『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』など多数。
(構成=村上 敬 撮影=小原孝博)