子供に「勉強しなさい」と言うのは逆効果

「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」

このようなことわざがあります。本人が必要としていないものは、たとえ周囲が強制しても身につかないという意味です。いくらうながしても勉強しようとしないわが子を前に、この言葉を思い出した親御さんも多いのではないでしょうか。

私自身は親に「勉強しなさい」と言われたことはありません。むしろ、病弱だったので「やめなさい」とは何度も言われました。読むなと言われても読みたくて仕方がなかったので、布団のなかで懐中電灯をつけて隠れて本を読んでいたくらいです。

これは自慢でも何でもなく、私にとって読書や勉強は“好きなこと”でした。勉強が好きで、本が好きで“必要だった”のです。だから強制される必要もないわけです。

それと同じように、人にはそれぞれ好きなことがあります。将棋の藤井聡太君にサッカーをやらせようとしても、それはムダなばかりか本人にとって有害なものです。

もし親御さん自身が、自分の親に「勉強しなさい」と言われて、喜んで勉強をした経験があるのなら、ぜひお子さんにもそうしてください。でも、私に言わせれば「勉強しなさい!」と言われて、喜んでやった経験がある人は一人もいないと思います。

せいぜい自分の部屋にこもって、勉強するふりをしているか、イライラしているかでしょう。「勉強しなさい」と子どもに言うのは、ネガティブな効果しかありません。子どもに勉強をさせたくないなら、あえて言うのもアリですが(笑)。

「テストで○点取ったら欲しいものを買ってあげる」は最悪

また、いくら勉強をさせたいからといって、「今度のテストで◯点とったら、△△△を買ってあげるよ」などともので釣るのは最悪です。勉強が自分の事柄ではなく取り引きの材料になってしまい、自分のためにするのではなく、“勉強してあげる”というスタンスになってしまうからです。

たしかに勉強は素晴らしいものです。ただしそれは、自分が必要と思ってやっている勉強に限ります。勉強は自らするものであって、けっして「してあげる」ものではありません。してあげる勉強からは、子どものためになるものは生み出されないのです。

「『勉強しなさい』といっても勉強をしないんです」
「少しも成績が上がらないんです」

写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

このような声をよく聞きますが、そういった声がけをして成果が出ていないのなら、言い方を見直すことをおすすめします。

親に「勉強しなさい」と言われなかったことからも、私も子どもたちに「勉強しなさい」とは言いませんでした。勉強は楽しいものだと信じているので、機が熟して「自分には勉強が必要だ」と感じたらやるだろうと思っていたからです。

でも多くの人は、「勉強はすべきもの」「やらなければならないもの」「勉強は子どもの義務」と思い込んでいます。しかし、この強制される感じや義務感が子どものやる気を失わせています。