今、先進諸国政府は90年以降日本がとった景気対策をなぞるように、財政支出や量的緩和でまたしても巨額のマネーを世界中に溢れさせ、資産価格を高騰させている。住宅価格が値上がりすれば、先進国の景気が回復し、金融商品化した資源価格が上がると新興国の景気が良くなる。好景気の間は資産価格の上昇を歓迎し、バブルが弾けると国頼みになって、財政の悪化は緊急時だからやむをえない、とされる。それが常態化して10年3月には国の借金が905兆円に膨れ上がる。先進国が景気対策として行う財政・金融政策の出番はもうない。
ただ、何もするなと言っているわけではない。
取り組むべき方策は3つだ。まず、すでに民主党のマニフェストにもある「東アジア共同体構想」。東アジアという共同体の中で、日本がどう利益を得ていくかを打ち出してゆく。さらに、将来はユーラシア大陸の主要国を巻き込んで、中間所得層が増大する大きな市場(中国・インド)と資源(オーストラリア)、技術(日本)、マネー(中東)を内包する巨大な「陸の経済圏」をつくるのである。
2つ目は「環境」だ。温室効果ガスの25%削減は、高騰が必至となる原油代の節約になり、前述のような資源高→所得減という悪循環を抑えることになる。
これは、3つ目の所得・雇用対策にも繋がる。所得対策に加え、例えば低賃金・人手不足の続く介護など個人向けサービスの分野を魅力ある職場にするよう、政府・民間で考えていかねばならない。これら3つを一体のものとして取り組むことが重要だ。
先進国の時代は終わった。かといって、悲観することはない。日本を含む先進国は成熟の段階に達したので、財政・金融政策もそこに対応したものであるべきだ。新興国と近代化の土俵でGDP成長率を競い合っても意味がない。
※すべて雑誌掲載当時