米国の代表格メーカーでさえ、安全な車を作るのは難しい

その背景には、GMがモノづくりよりも、金融ビジネスに傾斜したことがある。特に、2001年後半から2005年半ばごろまでの米国経済で、“住宅バブル”が発生し、膨張したことは大きい。資産価格の上昇をよりどころにして金融機関は貸し出しを増やし、それを元手にして米国の家計は自動車などへの消費を増やした。

その状況下、GMは、自動車販売金融事業などを手掛けるかつてのGMAC(ジーマック)を運営した。GMACは、短期の資金調達を行い、それをもとに消費者により期間の長い資金を貸し付けて利ざやを稼ぎ、収益を獲得した。その考えが強くなった結果、GMは技術面への問題、欠陥などに真正面から向き合うことが難しくなったと考えられる。

逆に言えば、米国の自動車産業の象徴だったGMでさえ、1万点もの部品が使われるエンジンをはじめ約3万点もの部品をすり合わせて安心、安全な自動車を生産することは容易ではない。そう考えると、世界的なEVシフトはGMが成長を目指すための“渡りに船”だ。

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GMがLG化学を選んだ「価格の低さ」

2016年にGMは韓国のLG化学から車載バッテリーなどを調達し、シボレー・ボルトEVの生産を始めた。GMがLG化学を選んだ理由は、バッテリー価格の低さだろう。評価の方法にもよるがEVの価格のうち3~4割をバッテリーが占めるとの見方がある。バッテリーの調達価格の引き上げは、完成車メーカーが利益率を高めるための重要な取り組みの一つだ。

シボレー・ボルトEV以降、GMとLG化学およびLGエナジーソリューションの関係は強化されている。その象徴が、GMがLGエナジーソリューションとの合弁事業によって開発したEVプラットフォームの“アルティウム”だ。LGエナジーソリューションは車載バッテリー事業の体制強化のために株式の新規公開を計画している。

アルティウムではバッテリーパックを水平、あるいは垂直に並べることによって、車種に応じたバッテリー性能の最適化が可能だ。アルティウムは、かつて米国で人気を得た“ハマー”のSUVにも用いられる。さらにGMはアルティウムのアーキテクチャに自動運転など先端の技術を搭載したEV生産を目指している。それによって、2035年までにGMは全乗用車をゼロ・エミッション車にする方針だ。