「トヨタよりもっとでかい会社をつくる」「僕は東大しか受けない」

今では東京・北海道間を頻繁に行き来する経営者だ。休学も社長就任も、両親へは事後報告だったという。

「全然知らなかったです。ただ、驚きもしませんでした。『トヨタ自動車っていう世界一大きい自動車会社があるんだよ』って教えたら『もっとでかい三木自動車をつくる』って言うような子でしたから(笑)」(裕昭さん)

左から父・裕昭さん、智弘さん、母・智恵子さん。

母・智恵子さんは、智弘さんのこうした発言を決して否定せずに育てた。

「智弘の幼少期の口ぐせは『ともくん天才、浩江ちゃん(姉)天才』でした。先生に褒められたことを自慢げに話し始めたら、私は『そうなの〜⁉ 偉かったね〜』って言っていましたね。高校生になって、『僕は東大しか受けない』と言ったときも、滑り止めは? とか受かりそうなの? とは聞きませんでした。大げさなことを言っているように見えたとしても、無理とか駄目と否定してしまうのは、子供の可能性を制限してしまう気がしたんです」

一方、智弘さんは母の次のような一言が心に残っているという。

「母には『お父さんのように好きなことを仕事にして食べていけることはとても幸せだから、あなたも早く夢を見つけて、好きなことが仕事になるように頑張りなさい』と言い聞かされていました。起業に踏み切れたのは、この言葉の影響が大きいかもしれません」

社長になり智弘さんが感謝し始めたのは、智恵子さんから人付き合いの基本を教え込まれたことだという。

「『アパートの共有スペースに知らない人がいても挨拶しなさい』とか『人の家におじゃまするときは手土産を持っていきなさい』などと教えられました。当時は近くの市民会館へ乗り込み、お年寄りと将棋を指したりすることもありました。母から教わった人との接し方が、投資家や大企業の社長にかわいがってもらえるようになったきっかけかもしれないです」(智弘さん)

(左)裕昭さんがサッカー日本代表チームのアスレチックトレーナーを務めていたときの家族写真。トルシエ元監督夫妻と。(右)智弘さんが共感した本。『脳を鍛えるには運動しかない!』は、裕昭さんも同じことを思い、子供2人にはさまざまなスポーツを経験させたという。

現在、経済学部4年生で休学している智弘さん。

「スポーツビジネスには国境がありません。海外で仕事をしたいので、大学は卒業する予定です。ビジネスと学業を両立しながら頑張りたいです」

(文=土居雅美)
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