◆低学年でやるべき算数②「図形のセンスを磨く」

もうひとつ、算数の中でも壁にぶつかりやすいのが「図形」問題だ。

「例えば立方体の展開図を問われた時、立方体を見ただけで展開図がパッと見える子がいます。立方体が頭の中で組み立てられるわけですが、これはテクニックではなくセンスによるもの。このセンスは、数多くの“立体遊び”に触れることで養われます」

立体遊びとは、折り紙に始まり、レゴブロックを代表とするブロックや、立体パズルなど、工夫しながら何かを組み立てる遊びだ。実際、図形のセンスに優れている子は、立体遊びの経験量が多い傾向にあるという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/KariHoglund)

「例えばブロックでお城を作るにあたり、まずどういうお城にするのか、頭の中で描きますよね。そして次の段階でどうするか、左右対称にするにはどうすべきか、一生懸命考えます。これがすごく頭を使うとともに、上から見る視野、横から見る視野、裏側から見る視野も養われていくのです」

前出の富永さんの教え子も立体遊びの経験量が多く、今は図形が大得意。

「彼は、図形の問題集やドリルは小学一年生まで一切やっていませんでしたが、トイレットペーパーの芯を解体してみる、立体のパズルを何十種類もひたすら作ってみる、磁石で立方体や正六角形を作ってみる――といった実体験をたくさん積んでいたそうです。偏差値の高い中高一貫校では、折り紙部が作るものとレゴ部が作る作品が秀逸だと評判なのも、折り紙やブロック遊びが算数力につながるっている証といえます」

◆低学年のうちにすべき算数③「没頭体験」

立体遊びにも通じることだが、ただただ考える時間や、何かに没頭する体験も低学年時代に是非とも体験する必要があるという。

「4年生以降になると覚えないといけないことも増える上、中学受験をする子は受験対策や大量の宿題に追われ、集中したり思考したりする時間が限られてしまいます。工作でも折り紙でも、読書(図鑑・漫画含む)でも何でもいい。スタートからゴールまでたどり着くまでにひたすら考える“迷路”遊びでもいい。時間のある低学年のうちに、何かに没頭させて、集中力や思考力を養っておくといいでしょう」

この時、本人が黙々と取り組んでいる最中に親が答えを教える“横やり”は、タブーである。同じく、没頭できる趣味があるにもかかわらず、その時間を削ってまで、本人が嫌がる学習塾に行かせたり、没頭している最中に「食事の時間よ」「お風呂に入りなさい」などと声かけしたりすることも、場合によっては“横やり”になる。

「先ほど紹介した教え子とは別の子は、年長の終わり頃から公文式に通っていたそうですが、8カ月で退会しました。集中すれば15分程度でできる問題をダラダラと1時間半もかけていたので、スパッと辞めたのです。結果、大正解。彼は浮いた時間でブロック遊びに興じたり、図鑑を読んだりすることに没頭し、(前述のように)図形が得意になりました」

“1時間半のダラダラ勉強”より、“1時間半の集中遊び”の方が何倍も価値はあるのだ。

「集中ゾーンに入った経験をたくさん積んでいる子は、その力が勉強に転換されたら成績は間違いなく伸びます。仮に、好きなことへの集中力が100%だとすると、勉強にはその50%以下しか使えません。好きなことへの集中力をMAXまで上げておけば、いざ嫌なことに出会った時でもその半分くらいは出せる。だからこそ“絶対集中力”を高める経験を積んでほしいのです」

以上の3つの力は、学力とほぼ直結する。つまり、3年生の学期末まではこの3つの時間さえ優先させればいいわけだ。やるべきことは、シンプルだ。

(構成=プレデントオンライン編集部)
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