屋外であっても大勢の人が集まっている場所はマスクが必要
次に現実に即して考えてみます。
戸外は、地面からの上昇気流も含めて必ず風が吹いています。この風がさらに大きく拡散させてくれます。前を歩く人と距離をとれば、なおさら危なくも何ともありません。上記の話は、あくまでオープンスペースだから言えることです。
屋外であっても周囲を壁に囲まれた狭い場所で人々が密の状態だったら、そうはいきません。咳を2回、3回とすれば、口から出るミストは2倍、3倍になり、狭い空間の中に溜まっていきます。
大勢の人が狭い範囲に集まっていたら、空中の粒子はなかなか拡散していきません。しかも、ウイルスを出す人は次から次へと咳や呼吸で出し、吸い込む人もくり返し吸い込みます。そこに長時間いれば、当然リスクは高くなります。
1平方メートルのスペースに何人もの人が集まる、例えば人気歌手の野外コンサートのような状況であれば、屋外でもマスクが必要です。屋外・屋内と言っても、一様ではありません。
風や時間の経過によって、粒子がどっちの方向へどう流れていくか。「こっちは来ないな」「ここはありそうだな」「ここは息を止めた方が良さそうだ」「今はマスクをした方がいい」と、場面ごとに考え、賢く対応することが大切です。
意外と感染リスクが高いエスカレータ
ここで、もう一つ大事なことをお話しします。マスクは一日中つけっぱなしで使うものではありません。
人間の緊張感はそう長く持続できず、必ず密着性が甘くなります。自分を守る時には、緊張感を持って密着性を確実にすべきです。本当に必要な時と、それ以外の時を上手に区別して、戸外などで必要なければマスクはポケットやバッグにしまい込んで、太陽の下、思いっきり息をしましょう。気が晴れますよ。
そして危ないと思ったら、取り出して緊張感を持って着けるのです。「一度着けたら触れてはいけない、着け外しは厳禁」などという、分かったような分からないようなトリセツは大誤解です。
さらに言えば、一般的な不織布マスクは、長時間の使用で素材自体が劣化します。だいたい積算で8時間ぐらいから劣化が始まります。長持ちさせたかったら、必要でない時は外してしまっておきましょう。
密室ではなくても、意外と危ないのがエスカレータです。長いエスカレータは理論上特に危険だと思われます。なぜ危険なのかを説明しましょう。
エスカレータは比較的広い空間にありますが、基本的に屋内に設置されています。空気の流れがあるにはあるものの、風が吹いているというほどではありません。図表2は、上りのエスカレータです。左から右へ時間が経過しています。
先頭の1番の人が咳をしたとすると、そこにウイルスを含むエアロゾルの雲ができます。時間が経てば拡散していきますが、すぐ後ろに乗っている2番や3番の人は1~2秒もしないうちに、薄まり切らないその雲の中に突っ込んでいくことになります。4番や5番の人が通る頃には拡散されて、リスクは低くなります。