中国に対する「武器」

アメリカはこれまで、IBMやAT&Tという巨大情報企業を、独禁法によって企業分割することで、その力を弱めてきた。GAFA分割論は、これと同じ手法を適用しようとするものだ。

しかし、プラットフォーム企業に対してその手法が有効でないことを、バイデン政権は重々承知しているのではないだろうか? そして、ハイテク企業がアメリカの強さの源泉であり、中国に対する最強の武器であると認識しているから、友好的な立場をとるだろう。

こうしたことを考えると、アメリカでは、ハイテク産業に関する条件が好転する可能性がある。もしそのようなことになれば、中国における変化と合わせて、技術開発力のバランスは、これまでとは大きく変わる可能性がある。

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アメリカでも問題は複雑

ただし、アメリカでもIT企業の巨大化に対する国民の反発が強まっているので、放置するわけにもいかない。どのような手段で対処するかの手探りが続くだろう。トランプ政権下のアメリカ司法省は、2020年10月20日に反トラスト法違反でグーグルを提訴している。

この問題は複雑だ。シリコンバレーと民主党、共和党の関係が、いくつかの面で「ねじれて」いるからだ。

まず、GAFA分割論は、下院司法委員会の反トラスト小委員会が、反トラスト法改革を提案したことがきっかけで、もともとは民主党が主導したものだ。歴史的にも、反トラスト小委員会は、大企業には厳しい態度で臨む民主党が主導してきた。バイデン氏も、この方向を支持してきた。

こうしたことから、バイデン政権においても、シリコンバレーの大手テクノロジー企業に対する圧力は続くだろうとの見方もある。

2020年3月には、アメリカ連邦取引委員会(FTC)の委員にアマゾン・ドット・コムへの批判で知られる新進気鋭の法学者リナ・カーン氏を指名した。また、ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)で競争政策を担う大統領特別補佐官にIT大手の解体論を唱える強硬派であるコロンビア大学のティム・ウー教授を起用した。

こうしたことから、IT大手との攻防が激しさを増しそうだ、との報道もある(3月24日、『日本経済新聞』「米、巨大ITと対決姿勢」)。