“五輪特需”を歓迎するブリスベンだが…
ブリスベンとはどんな街なのか。オーストラリア東部クイーンズランド州の州都であるこの街は、人口223万人。コロナ禍前には日本との直行便があり、市内にある「ローンパインコアラパーク」は日本人カップルの海外旅行先として名高い。周辺には美しい海岸「サーファーズパラダイス」を擁するゴールドコーストという街がある。
この一帯を五輪開催地として見るとどうだろうか。古くは1988年に万博(EXPO)、2003年にはラグビーW杯が開かれており、国際的な大イベントを経験しているが、IOCにとって大きな選出の決め手になったのは、2018年にゴールドコーストで開催された英連邦競技大会(コモンウェルスゲームズ)が大成功に終わったことだ。2032年の開催に当たり、両都市を含む周辺地域にある現用施設を80%利用できるとしており、低予算での実施を目指している。
内定が決まったブリスベンの様子はおおむね歓迎ムードのようだ。コロナ禍で痛手を負った旅行業界をはじめとするサービス業や、土地価格の上昇を見込む不動産業など、すでに“五輪特需”を期待する業界もある。
ブリスベンをベースに長く豪州事情を発信してきたライターの植松久隆さんは、さまざまな要素を勘案したうえでこう歓迎する。「ブリスベンにしてみれば、シドニー、メルボルンの2大都市には規模や知名度で遠く及ばない永遠の第3都市から脱却し、今後の有りようを打ち出していく絶好機です。開催まであと11年と、コロナ禍以降の五輪運営を見極めながら準備ができることも大きく、州と市が結束して『オール・ブリスベン』で準備を進めていけば素晴らしい大会になるのでは」
内定は「はったり男爵」のおかげ?
一方、今回の内定をめぐり、こんな話もある。筆者が話を聞いた現地在住者のひとりは、「そもそもこのタイミングで決まってしまうこと自体、(IOC副会長で豪州NOC会長の)ジョン・コーツ氏の差し金のように思える。誘致が正式に決まって以来、ブリスベンが開催権を得られるよう、同氏がいろいろとアドバイスしたのでは」と推測する。
コーツ氏は、東京五輪でいわば現場監督に当たる調整委員長を務めており、「ぼったくり男爵」のバッハIOC会長と並んで、「はったり男爵」と揶揄されている人物だ。
ブリスベン五輪がいわば「コーツ案件」ではないかとされる疑念に加え、市民の間からは不安の声も上がる。