狂いだすトンプソンのスイング

トンプソンは強く打つことは得意だが、柔らかく打つことは苦手なのだろう。アプローチでもフルショット同様に上から叩きつける。ソールを滑らせて打つことができない。フワッと打つことができないのだ。

パーオンができればいいが、外したときに弱点が露わになる。アプローチはスコアメイクの鍵。そのアプローチが弱点となれば、メジャー大会では致命傷になる。

予期せぬダブルボギーにトンプソンはショックを受けていた。加えて2位に浮上していたフォン・シャンシャンとの差が一気に2打に縮まった。

シャンシャンは元世界ランク1位、2012年全米女子プロの覇者である。逞しい体から放つパワフルショットが持ち味。笹生だけを見ていたトンプソンは、思わぬ強敵が姿を現して吃驚したかもしれない。自分を死に追い詰める刺客が突然現れたと。

このホールからトンプソンのスイングが狂い出す。元々ジャンプアップする変則スイングだが、変則も固まっているうちは何の問題もないが、一度狂うと変則だけに元に戻しにくい。

それでも何とかパーを拾っていくが、14番でほころびが広がりボギーを打つ。まだリードは保っていたものの、じわりじわりと焦りが生じてくる。何とかバーディを取って楽になりたいと思う。

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息を吹き返す笹生、1打差に迫る畑岡

16番のパー5は絶対にバーディが欲しい。自分のパワーを持ってすれば取れるはず。ところがバーディパットがわずかに入らずにパーで終わる。流れが悪いときは得てして普段なら入るパットがわずかに切れてしまう。

一方で一度は連続ダブルボギーで死んでいた笹生が密かに息を吹き返し、自分のゴルフを立て直していた。このホールをバーディとしてトンプソンとの差を2打としたのである。さらに一組先を回る畑岡もこのホールでバーディを奪っており、トンプソンとの差はわずか1打にしていた。

17番もパー5である。前日の3日目同様にトンプソンはドライバーを握った。しかし、このショットが「風を読み間違えた」と左の深いラフに入り、「これまで見たこともないひどいライだった」と嘆く。

それでもパー5ならまだまだバーディにするチャンスはあったはずだ。セカンドをフェアウェイに出し、3打目は142ヤードとトンプソンならばショートアイアンで難なく乗せられる距離だ。9番アイアンで放ったショットはピンにぴったりのはずだった。

ところが何とグリーンにも届かない。世界のトッププロが上りを計算に入れなかったとは思えない。であれば、風の影響か。トンプソンのショットは強く打つだけにスピンが強烈にかかる。アゲンストの風ならば大きく戻される可能性は十分にある。