「海洋散骨」は法律上グレーゾーンで船チャーター代もかかる
「海洋散骨なら大丈夫」という人もいるかもしれない。しかし、やはりコストがかかる。パウダー状に粉骨する費用、船をチャーターして撒く費用など、遺骨の分量によって変わるが最低で数万円、場合によっては数十万円が必要となる。そもそも、海洋散骨は法律上グレーゾーンであり、また、親族の合意形成がないとトラブルにも発展するケースも少なくないので、より慎重になるべきだ。
つまり④「そもそも墓は不要。散骨でいい」は、自身の信念で散骨するのはよいが、あくまでも親族の合意形成がなされていることが前提となってくる。これは、なかなか面倒臭い。結果的に合意形成できず、折衷案として「分骨」することも多いが、こうなれば散骨と永代供養墓との二重コストとなってしまう。
「手元供養」という手段もある。遺骨を人工ダイヤモンドなどの宝石にしたり、しゃれたガラスケースなどに入れたりして手元に置いておくのだ。しかし、手元供養は安くはない。
インターネットなどで調べてみればわかるが、1柱あたり数十万円のコストがかかる。愛する配偶者や子供を先に亡くした場合、ずっと身につけておいておきたいという心情は理解できないでもないが、それも、遺骨ダイヤモンドの後々の継承のことを考えると、いずれはお墓に埋葬したほうがよい。
墓じまいを決断した段階で家族や先祖の「遺骨が彷徨(さまよ)う」
一番、コストを抑えたいのなら、自宅の仏壇に骨壺に入れた状態で祀り続ける、という手段はあるにはある。しかし、古いご先祖様の遺骨をずらりと自宅に保管しておくことは、物理的、心的に負担が重く、同時に衛生面の観点からオススメできない。
墓じまいしたい人にはそれぞれ深い事情はあるだろう。だが、墓じまいをした段階で、どうしても家族やご先祖様の「遺骨が彷徨(さまよ)う」ことになるのだ。結果的に改葬にかかる総費用は、1柱あたり最低50万円とみてよい。ケースによっては100万円以上のコストが発生してもおかしくない。
最後に③「都会に移り住んでいるため、故郷の墓の管理ができない」の場合であるが、このケースは管理費だけを滞ることなく納め、何年かに一度でも墓参りすればよいだけの話だ。必ず墓参りしなければいけない、と思うと窮屈なので、可能な範囲でやればいい。それもできなければ、年に一度でも菩提寺に電話で近況報告すればよい。
墓じまいをしたい、と考える人は概して、責任感が強い。自分の代で墓問題を決着させ、次世代にツケを回したくない、と考えられているのだろう。
その気持ちを否定はしない。だが、上記で紹介したような墓じまいを巡る想定外のコストに困惑する人も少なくない現状を見ると、筆者は、いっそ逆転の発想で墓問題を「次世代にツケを回す」くらいの感覚を持ってもいいのではないかと思っている。