「生活不安」は改善方向だが、「雇用不安」は依然強い
最後に、コロナの感染推移と国民の生活不安との関係を見てみよう。
内閣府では、景気判断の基礎資料を得るため、消費者意識の推移を調べる「消費動向調査」を毎月実施している。
その中で、今後半年間に「暮らし向き」や「雇用環境」が良くなりそうか、悪くなりそうかを聞いている。ここでは、この2項目の意識レベルについて、「悪くなる」100%から「良くなる」100%までの回答を0~100%に換算した指標の推移を図示した(図表4)。
この指標の下降が生活不安の高まりを示している。
実は、生活不安の高まりは、感染者数レベルではその後に比べ軽微だった第1波の時が、最も深刻だった。得体の知れない世界的なパンデミック不安に加えて、その後、解消されたが、当初は、マスク不足やトイレットペーパーの買占めなど物資調達の不安、あるいは学校の休校、通勤停止、企業や各施設の休業などが相次ぎ、今後、生活や雇用がどうなるかが見通せない状況の中で、生活不安が大きく高まったのである。
2020年4~5月の第1回目の緊急事態宣言の下で、一応、感染拡大が抑えられ、5月25日までで宣言が解除されてからは、生活不安は大きく改善の方向に向かった。
もっとも、感染拡大の第2波、第3波、第4波と、いったん収まるかに見えた感染拡大が何度もぶり返し、そのたびに、生活不安も再度高まることを繰り返すという推移をたどった。
ただ、グラフの推移を見ると、傾向的には生活不安は改善の方向をたどっており、2020年4月の最悪のレベルからは離脱してきていることも確かである。
「暮らし向き」の生活不安と「雇用環境」の生活不安を比べると、実は、「暮らし向き」より「雇用環境」に対する生活不安のほうが深刻であることがデータで示されている。生活不安の改善が「雇用環境」ではなかなか実現せず、コロナの感染者が増え始める前の2020年2月の生活不安レベルに「暮らし向き」のほうは回復してきているのに対して、「雇用環境」の場合は、なお大きく下回っているままなのである。