持病を持つ人とその家族も一度に優先予約可能

筆者の住むロンバルディア州の予約受付サイトには、接種対象年齢(5月10日より50歳~59歳の人にも拡大、1971年生まれも含む)にあたる人、国が指定する疾患(肝臓病や糖尿病、呼吸器疾患、心臓病、腫瘍など)の患者、重度障がい者、16歳から59歳までで医師に接種が必要と判断された人という4つのカテゴリーが設けられている。妻は最後のカテゴリーにあたるので、該当のリンクから予約手続きに入る。

ロンバルディア州のワクチン接種オンライン申込みサイト

筆者のときと同様に健康保険証番号と個人納税者番号を入力すると、4月30日に1回目の接種が可能だという。指定された接種場所は筆者が予約できた場所とは異なり、ミラノ市内にあるワクチン・センターだ(イタリアではHUBハブと呼んでいる)。ちなみに現在、イタリアには全国で約2200カ所のワクチン・センターが作られている。

さらに持病のある人や障がい者、医師に必要と判断された人が接種を受ける場合、同居する者も3人まで一緒に接種できる仕組みになっていた。本人のケアをする人の負担を減らそうという目的であり、とても合理的だと感じた。筆者も自分の予約をキャンセルして妻と同時接種に替え、17歳の娘も一緒に申し込んだ(イタリアのワクチン接種は16才以上)。

同居人を含む形での優先接種の起源は、約40年前にさかのぼる。精神障がい者を施設に閉じ込めず地域社会の中で支援していくという1978年の「バザーリア法」、それを踏まえた1992年の法律104号(障害者の援助、社会的統合および諸権利に関する基本法)によって、イタリアではハンディのある本人に加え、その世話をする家族にもさまざまな支援を与えることが法的に定められている。今回の新型コロナ(欧州ではCovidと呼ぶのが一般的)のワクチン接種では、この法律が指定疾患などの患者とその家族にも適用された形だ。

ミラノの最先端地区に設けられたワクチン・センター

ミラノ市内のワクチン・センターは3カ所あるが(病院を除く)、中でもロンバルディア州が威信をかけて作ったシンティッレ(Palazzo delle Scintille)のセンターは、1923年に建てられた旧見本市会場を利用したもの。美しいクーポラ(ドーム状の屋根)が特徴的な建物で、第2次大戦中には空爆で被害を受けたスカラ座に代わって、ここでオペラが開催されたこともある。

シンティッレ周辺の一帯は、「シティ・ライフ(City Life)」と名付けられた再開発地区だ。日本の磯崎新が設計した棟を含む3つの超高層ビルや、イタリアの人気ミュージシャン、フェデッツも住む高級マンションが立ち並び、オシャレなカフェやショップが軒を連ねる、ミラノの最先端エリアである。