「鶏口となるも牛後となるなかれ」は本当か

突然ですが、「鶏口となるも、牛後となるなかれ」という格言を知っていますか?

これは、一般的には、牛は鶏よりも秀でているという考えから、「優れた集団の後ろにつくよりは、弱小集団でもトップになったほうがよい」というたとえになります。

心理学では、この格言が実際にあてはまるような現象が観察されています。

ここに、AさんとBさんがいるとします。

AさんとBさんは、高校入学直前までは、ほとんど同じ成績でした。ところが、Aさんは偏差値の高い進学校に入学したのに対して、Bさんはたまたま高校受験で失敗してしまい、Aさんとは異なる、偏差値がそれほど高くはない高校に入学することになりました。こういうことは、現実にもよく起こることですね。

さて、ここでみなさんに質問です。同じ成績だったAさんとBさん、その後二人の成績は変化するでしょうか? 一見すると、偏差値が高い高校に入学したAさんのほうが成績が良くなるように思えます。

高校受験に失敗して、学業レベルがそれほど高くない高校に入学したBさんは、たいそう落ち込んだに違いありません。Bさんを含めた私たちの多くが、偏差値の高い高校に入学したほうが、成績をあげるのに何らかの形で有利に働くと考えているからです。

低い偏差値の高校に入学したほうが好成績に

さて、その後、この二人の成績はどのように変化したのでしょうか。もちろん数カ月後に変化することもあれば、一年、二年先のこともあるでしょう。

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ここでは仮に一年後、高校二年生の時に、どうなったかを示してみたいと思います。

Aさんは、よくできる生徒ばかりの高校だったため、まわりの友だちも優秀な人たちばかりでした。そのため、その優秀な友だちと自分を比較してしまい、自分は本当はあまり勉強ができないのではないかと落ち込んでしまい、勉強に対するやる気を失い、最終的には能力以下の成績しか収めることができなかったという例も、よく見られます。

一方のBさんは、そこまで成績が良くない生徒が集まる高校なので、他の生徒と比べて成績が良いほうでした。自分よりも成績が悪い友だちと自分を比べて、「自分は勉強ができるんだ」と自信をつけます。そこから勉強に対するやる気もあがり、成績がさらに良くなり、一年後にはAさんよりも成績が良いというふうに変化しました。

高校入試の際には、二人の成績は同じだったのに、Aさんよりも偏差値が高くない高校に入学したBさんのほうが、最終的に良い成績を収めたのです。この現象は、一見すると不思議だと思いませんか?

それならばそもそも偏差値の高い高校を目指す必要はないことになります。