天才性にしたがって生きる環境を設計するには

天才性に基づいた生き方を選択し、天才性にしたがって生きるための環境を設計する一連のプロセスを「ジーニアスファインダー」と呼びます。

私がこのジーニアスファインダーを提唱し、それを実践してきた経緯を少しだけ述べます。

私(山口揚平)と兄(山口和也)は、10年前、「武者修行プログラム」を創業し、大学生を中心にその人の「天才性」を見つけ挑戦を助ける仕事をしていました。

兄は年間1000人、総計で約3800人の学生一人ひとりと真剣に向き合う作業を淡々と続けました。兄は、残念ながら2020年10月に難病によって47歳の生涯に幕を閉じましたが、膨大な実例を残してくれました。

一方、私のほうは、自分の起業から売却を終えた2010年から10年間、十数社の創業を自ら行い、あるいはその支援をしてきました。

当然、それぞれの企業には社長がいます。その社長たちは皆、それぞれまったく異なる天才性を持っています。そしてその天才性を活かすために、裏方の経営面をサポートするのが私の会社の役割です。

業界は多種多様、いわゆるテックベンチャーから劇団、リトリートホテル、エコヴィレッジに至るまでの様々な企業群で、それを束ねるのは、まっすぐに天才性を生きる社長たちです。

写真=iStock.com/kohei_hara
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天才性に忠実に生きることが自分と周囲を幸せにする

私は投資や支援をする時に「この人の本質やミッションは何か」を問い、そしてその天才性を見極め、そこからブレずに生きているだろうか? という一点のみ考えてきました。

業種も業態も問わず、儲かるかそうでないかなどはまったく考えませんでした。自分の天才性に忠実に生きることがその人にとっても周りにとっても幸せをもたらすと思っていたからです。

実際、自分の天才性を見つけ、自分なりにミッションを見つけた人は、他人の視点に振り回されず、自由にストレスも少なく仕事をしています。

たとえば、一緒に事業を行っているロボティクス会社のCEO林摩梨花氏は、アンドロイドの専門家である石黒浩博士に「1秒たりとも好きではないことはしてはならない」と10年前に言われ、悩みぬいた上で、自分の使命や行動指針が定まったそうです。

そして林氏は、自分の心の内から本当に沸き起こる使命と多少でも他者より秀でていると思われる天才性を活かして動きはじめた時、環境や仕事が整いはじめた、と言っています。

他にも、大学時代に自分のミッションを見つけてそのまま起業した人、30歳で会社を辞めて自分の信念に合った新たな事業を起こした人、35歳で自分の天才性を活用し転職間もないうちに管理職候補として期待されている人、40代で大企業を辞めて新たな道を踏み出したことで、自分が心からやりたいことを見つけた人──。