「国際機関が携わった報告書と呼べる代物ではなかった」

4月2日付の産経新聞の社説(主張)は冒頭からWHOの報告書を「国際機関が携わった報告書と呼べる代物ではなかった」と手厳しく指摘し、そうなったわけをこう分析する。

「調査に対して中国から全面協力が得られず、中国側と記述を調整した『共同報告書』だったことが、不十分な内容にとどまった主な原因である」
「中国と親しいテドロスWHO事務局長でさえ『(中国側から)データが十分に提供されず、広範囲にわたる分析が行われたとは思えない』と語った」

報告書がいかにずさんであるかがよく分かる。

産経社説は「中国外務省の報道官談話は『科学的で専門的な精神を称賛する』と、報告書を高く評価した。独り喜ぶ姿は滑稽に映る」とも書くが、習近平政権の本質をよく捉えている主張である。

もはや中国はWHOから脱退すべきではないか

産経社説はさらに指摘する。

「データや検体の不備に加え、WHOの調査団の現地調査は中国側が同意した場所に限られた」
「これでは科学的な分析は難しい。にもかかわらず、感染経路についても中国政府ばかりが喜ぶ内容が示された」
「テドロス氏でさえ不十分さを認めたのだから、報告書の名を冠すること自体が疑問である」

「中国が喜ぶ」「テドロス氏でさえ」「名を冠することが疑問」と産経社説はとことんWHO報告書を批判する。ここまで批判の言葉が並べられると、読んでいて多少疲れてくるのだが、そうはならない。それは産経社説の指摘がすべて事実であるからだ。もはや中国はWHOから脱退すべきではないか。

産経社説は「中国政府は新型コロナの初動段階で隠蔽に走った。今回の報告書が、それをなかったことにしたい宣伝に利用されてはたまらない」とも指摘し、最後に「WHOは人類のために新型コロナの起源を解明せねばならない。科学的調査の自由な実施を認めるよう中国政府に迫るべきだ」と主張する。

産経社説は見出しも「WHO報告書 中国に利用されただけだ」と掲げているが、中国では「自由」も「科学的調査」も皆無である。習近平政権はWHOの武漢調査とその報告書を自国のプロパガンダに使っているのだ。その行為は決して許されない。

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