アメリカでは廃れないと断言できる

これに伴い、2020年5月には数千人だったユーザーが、1月の1カ月間で400万ダウンロードと激増、1000万人を超えすでに評価額10億ドル(約1055億円)を超えるユニコーン・スタートアップ企業の仲間入りを果たした。コメディアンやベンチャーキャピタリストなどで300万フォロワー超えの“Clubhouseスター”も出ている。

クラブハウスが短期間でここまで大きくなった最大の理由は間違いなくパンデミックだ。外で人に会えず、すでに“ズーム疲れ”も始まっていたところに、音声だけのクラブハウスはもっと気軽にリラックスして会話が楽しめ、さらに思わぬ人にも出会えるという機能で、自粛疲れのアメリカ人にとってはまさに新鮮なツールだった。

ではもしパンデミックが終わったらクラブハウスも廃れてしまうのだろうか? そうはないと断言できる理由がある。なぜならアメリカ人は、日本とは比較にならないほどオーディオコンテンツが好きな国民だからだ。

広大な国土に情報を届けるラジオは1万5000局も

ラジオ→ポッドキャスト→クラブハウスというトレンドが生まれたアメリカには、もともとオーディオコンテンツの文化的な土壌がある。1920年代に誕生したラジオ局は現在全米にFM、AM、気象情報を含め約1万5000局存在する。ニューヨーク州内だけでも600局は下らないと言われている。

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なぜこんなに多いのか? まず国土が桁外れに広い、人里離れたところに住む人にも平等にメディアを提供するために、そして多人種多民族の多様性をカバーするために、ニュースを始め、音楽はカントリーからR&Bまで幅広く、言語も韓国語やロシア語などあらゆるタイプのラジオ局が誕生し、マイカーブームに乗ってさらに発展していった。

日本のラジオは1局でニュースからトーク、音楽までをカバーしていて、それに慣れている皆さんには想像がつかないかもしれないが、アメリカにとっては無数のラジオ番組こそが多様性と民主主義を象徴するメディアだと言っていいだろう。

インターネットが普及してからは全盛期ほどのパワーはなくなったが、ネットへの移行が早かったのと車社会ということもあって、ラジオは静かに生き延びているだけでなく、音声メディアへの国民的な愛着につながっている。

リスナーが直接喋るアメリカのラジオ文化

ラジオが繁栄したもう一つの理由は、アメリカ人がなんといっても喋るのが大好きで、子供の頃からの教育もあって人前で喋るのが得意な国民性であることだ。

アメリカのラジオの特色は、ただ聞き流すだけでなく常に視聴者が参加できる点にある。例えばトークラジオは、パーソナリティーが1人でトークするものではない。リスナーが電話でコールイン(参加)してきて、自分の主張を喋りまくりパーソナリティーと議論する。