コロナ前にひねり出した誘致施策がカジノと関西万博
独立行政法人の日本政府観光局(JNTO)の現在の理事長もJR東の社長・会長を務めた清野智氏だ。観光庁が年間90億円程度の運営交付金をJNTOに拠出するが、その事業委託先のほとんどはJTBとなっている。そして、そのJTBの筆頭株主はJR東で、JTBのトップ人事などはJR東の了承がないと決まらない。
菅―二階両氏が張り巡らす運輸観光業界の「利権」の構図は、運輸・観光業界に根深く浸透している。政府関係者が「コロナがまん延しているのにもかかわらず、Go Toキャンペーンの継続にこだわった理由は、まさにこの利権構造にある」と解説するように、この関係は周知の通りだ。
日本の運輸・観光業界は自民党トップ、ナンバー2と「持ちつ持たれつ」の関係でコロナ禍前でも一緒になってさまざまな施策をひねり出し、その恩恵にあやかろうとした。その象徴が全国にカジノなどを誘致してインバウンドをさらに増やそうとしたIR(統合型リゾート)での一連の政策や関西万博の誘致・開催だ。
「カジノのラストリゾート」と呼ばれる日本市場開拓のカード
菅首相が執心したのが地盤である横浜市へのIR誘致だ。
IRは新型コロナウイルス感染の拡大で今や風前の灯だが「東京都心に近い横浜は日帰りで外国人が来ても宿泊するのは東京と、経済効果が出ないことから、カジノを誘致することで宿泊客の増加を狙った」(横浜市議会関係者)とされる。
さらに菅氏が横浜へのIR誘致にこだわったのは、安倍政権時の官房長官時代に、「米トランプ大統領(当時)の最大のスポンサーだったカジノ王、シェルドン・アデルソン氏率いるラスベガス・サンズの日本進出への意向も働いた」(自民党関係者)という解説もある。
当時、アメリカファーストを掲げて貿易赤字相手国であった日本に対して厳しい態度を取ろうとしていたトランプ氏に対して、「カジノのラストリゾートと呼ばれる日本市場開拓のカードを切って、トランプ氏を取り込むと同時に、横浜へのカジノ誘致で地元に新たな利権を作る思惑があった」(同)というものである。