こうした隔たりはメールなどのコミュニケーションでも生じます。「コミュニケーションにおける最大の問題は、意思の疎通ができたと錯覚することだ」とは、劇作家ジョージ・バーナード・ショーの名言です。メールやショートメッセージで思いがけず人間関係を破綻させてしまわないためには、何に気をつけるといいのでしょうか。仕事関係のやりとりで覚えておきたい注意点をみていきましょう。

・絵文字を使うのもあり(ただし相手との関係を考えて)

絵文字は文にニュアンスや声の調子、感情を添えてくれます。リズがモリーに「遅れないでよ!」と書いたあとにスマイルマークの絵文字がついていれば、モリーは「あ、からかっているんだな」と伝わります。

とはいえあまり多用すると、相手とそこまで親しくない場合はとくに、ビジネスのやりとりにふさわしい品格に欠けてしまいます。相手がどう受け止めるかがわかるようになってから使うのが無難でしょう。

・誤字脱字はそれ自体が書き手の心を表すと心得る

誤字脱字は、書いた人があわてて送ったか、気持ちが高ぶっていたかの表れだと言っていいでしょう(もしくは上司から部下へのメールで誤字など気にしていない、など)。研究者のアンドリュー・ブロツキーは、誤字は「感情を増幅する」と表現しています。

モリーからあちこちに誤字のある怒りのメールが送られてきたら、受け取ったリズは「モリーはとにかくめちゃくちゃ怒ってこれを送りつけてきたんだな」と想像し、相当激怒している、と解釈するわけです。

・意図した通りに読んでもらえるかを送る前に確認
リズ・フォスリエン、モリー・ウェスト・ダフィー『のびのび働く技術 成果を出す人の感情の使い方』(早川書房)

オグルヴィ・グループでグローバルの人事責任者を務めるブライアン・フェザーストンホーは、社員を前に「感情がからむ問題をメールでうまく収束させた経験はありますか」と問いかけるそうです。ほとんどの人がノーと答えます。一方、同じ人に「メールで問題に火をつけてしまった経験は?」とたずねると、「みんな手を挙げる」のだそうです。

メールの送信ボタンを勢いよく押す前に、必ずもう一度読み直して伝えたいことがはっきりしているか、文章は意図したとおりのトーンになっているかを確認するようにしましょう。

具体的に「この前出してくれた案、いいと思う。どうやってドラフトに落としこめるか話そう」と考えているのに、「会って話そう」とだけメールで伝えてしまうと、言われた側はむだに不安になってしまいます。