変異種の対応は「3日間の隔離」で足りるのか
変異種が最初に発生した国とされる英国と南アフリカからの入国者に対する「3日間の検疫所での滞在」について、外務省は「検疫所長の指定する場所(検疫所が確保する宿泊施設に限る。)での待機を求めた上で、入国後3日目において、改めて検査を求める(1月13日付通達)」と記している。
これに加えて、田村憲久厚生労働相は「英国や南アフリカなどから入国する人に対しては、国直営のフォローアップセンターを作り、1日1回LINEや電話などで健康確認をすることを考えている」とし、専従者を置いて帰国者の健康観察や行動確認を強化する方針を示している(NHK、1月19日)。
このように、国は入国者からの変異種拡散防止策を取ろうとしていることがうかがえる。しかし、3日間の待機についてはお願いなのか強制なのかあいまいなまま。
また、厚労相の発言は「3日間だけ過ごせば自宅等に帰ってよい」とも読み取れる。つまり、他国で実施されているような「入国者を一定期間止めおく」といった手段で拡散を防ごうという考えは、この期に至ってもまだないようだ。
変異種による感染者が見つかった静岡県はその翌日、県独自の「感染拡大緊急警報」を発令した。県民へ注意を改めて促したものの、やはり「自粛と対策の徹底」を繰り返すのが限界で、わずか数時間の予告で市中ロックダウンを図ったブリスベンとは対策がかなり異なる。政府は「水際対策に漏れがある」と認めた上で、さらなる拡散を緊急的に止める手段を打つべきではないか。
強制的な隔離措置を取るしかない
これまで日本では、「隔離措置は私権の制限につながるため無理」と解釈されてきた。しかし、現状を見る限り、変異種発生国からの帰国者かつ3日間という限られたものでこそあれ、「事実上の隔離措置」が導入されたことは疑いがない。
「要請なのか強制なのか」といった議論を飛び越えてパンドラの箱を開けてしまったのならば、いっそのことお願いベースの隔離をやめ、14日間は強制的に隔離措置を取るしかないのではないか。
筆者自身も英国に住む在外邦人として、基準があいまいなまま氏名を公表されるというリスクを抱えたくはない。「帰宅を含め、14日間は公共交通機関を使えない」という無理難題も、隔離対象を広げることで問題の解決につながる。
完全な鎖国をしない限り、外国からは今も人が日本へと入ってきている。関係当局の現実的な対応に期待したい。