朝晩、わざわざ車に乗って「通勤を再現」するアメリカ人
多くの人が、郊外の住まいから大都市へと自家用車で通勤するのが日常の光景だったアメリカでは、通勤がなくなったことによって1日の暮らしにメリハリがなくなり、労働意欲も生産性も下がってしまうとして、わざわざ始業時間前に車で都心へコーヒーを買いに行き、終業時間後に町内をじっくり散歩して「通勤を再現」する人もいるそうだ。そうやって、脳に「今から仕事だよ」「仕事終わったよ」と伝えることで、体も切り替わるのだという。
長年のルーティンがなくなるとか、これまで会えていた人々と距離を置かねばならないといった変化を乗り越えるのは、簡単なことではない。疫病の直接的な症状とは別の、「疫病社会によって生じる変化や不安が起こす心身の症状」というものも、確実に存在している。
テレワークで個人の生産性は上がったのか
そんな心身の変化と向き合いながらも、人々は引き続き、それぞれの社会の持ち場で働いている。さて、うなぎ上りの感染者数以外は様々なことが基本的に「○割減」というダウントレンドのコロナ社会において、テレワークをする個人の生産性は上がっているのだろうか、下がっているのだろうか。
野村総合研究所(NRI)が12月にリリースしたレポート「新型コロナウイルスと世界8か国におけるテレワーク利用 ~テレワークから『フレックスプレイス』制へ~」が、その答えを示してくれる。
2020年7月にNRIがグローバル規模で行なった生活者アンケートの結果から、日本、米国、英国、ドイツ、イタリア、スウェーデン、中国、韓国の8か国のテレワーク状況を抽出。すべての国でテレワーク利用率が急増しているが、中国(都市部)の75%が最も高く、日本の31%(2020年7月時点)が8か国中最も低いという現実を知らされる。これについて、同レポートは各国のロックダウン政策の厳格さとテレワーク普及率との高い相関性を指摘している。
その中で、8か国すべての過半数の人々が生産性に変化なし、もしくは上がったと回答しており、ほとんどの国で「テレワーク許容派」が「テレワーク拒絶派」より多いとの結果も興味深い。
社会のリモートシフトが始まって数カ月時点の反応ではあるが、テレワークはグローバルに歓迎されているのだ。NRIでは、「テレワーク利用者は総じて善戦している」「『テレ(遠隔)』というニュアンスは薄れ、むしろ柔軟な勤務場所が選択できる『フレックスプレイス制』という形に転身していくのではないか」、そして「テレワークのさらなる浸透が予想される」としている。