コロナ収束後のテレワーク推奨企業は1割のみ

これに関して興味深い調査もある。パーソル総合研究所の「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」によると、緊急事態宣言時とそうでない時期の企業のテレワーク方針に違いがあることがわかる。

「原則テレワーク/テレワーク推奨企業」(原則テレ)と社員に選択を委ねる「希望に応じてテレワーク可企業」(希望テレ)を調査している。緊急事態宣言発令時は原則テレ企業が43.6%、希望テレが27.5%の計71.1%と高い。しかし「緊急事態宣言は出ていないが、新型コロナウイルスの感染リスクがある時期」になると、原則テレ企業が23.5%、希望テレ企業が36.6%の計60.1%と下がってしまう。とくにテレワークを積極的に行っていると思われる原則テレ企業が20ポイント近くも減少している。

さらに「新型コロナウイルス収束後」はどうするのかも聞いている。驚くのは原則テレワーク/テレワーク推奨企業が11.9%と大幅に減少していることだ。また、社員の希望に応じてテレワークを認める企業が32.9%。社員の希望で認めるということは原則出社である。もちろんコロナ前よりも増えているとはいっても、推奨企業が1割強というのでは、日本企業の働き方が変わったとはとても言えないだろう。

宣言解除とともに一斉出社

緊急事態宣言をきっかけに始まったテレワークが定着しないのはなぜだろうか。そもそも昨年春の緊急事態宣言下の在宅勤務では、テレワークはできなかったという声もある。倉庫業の人事部長はこう指摘する。

「テレワークは在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の3つだが、最も難しいのが在宅だ。当社でもコロナ前からモバイルからスタートし、サテライトオフィス勤務へと慣らし運転を始めるべきだと言い続けてきたが、それができないまま緊急事態宣言で一足飛びに在宅勤務に突入した。当然、会社貸与のパソコンもなければ通信環境も整備されていない。宣言期間中は社員はメールを見るぐらいでほとんど仕事をしていなかったと思う。ほぼ休み状態だから、その間は有給休暇の取得率も下がっている。宣言が解除されると全員一斉に出社したが、今も変わらない状態が続いている」