高校入学段階で「自分は私大文系しか行けない」では困る

読解力の有無は人生を左右する大問題だと新井さんは言う。

「特に危惧しているのは高校に入学する段階で『自分の進路は私立大文系以外に選択肢がない』となってしまう生徒の多さです。その背景にあるのが読解力です。数学や理科のように学年が上がるごとに新しい知識や概念が増えていく教科では、読解力がないことで勉強の遅れが生じやすい。その結果、理数は苦手だからと消去法で文系しか選べないことになってしまうんです」

読めないがために将来の選択肢を狭めてしまうのはもったいない話だが、それだけでなく社会に出て立ち行かなくなる可能性もある。

「今の子が活躍する2030年代には、事務職の50%がAI(人工知能)に代替されることが予想されます。つまり、文系の人が就く事務系の仕事は減り、賃金が安くなることが考えられます。一方、あらゆる分野がテクノロジーと関わることから、多くの仕事に理系のリテラシーが求められるようになるでしょう。その時代に職を失わないためには、文系でも理系の基礎知識を併せ持っていなければならない。プログラミングも関数も何もわかりませんという状態では、15世紀の人がタイムマシンで21世紀にやって来て働くような状況になってしまうのです」

もちろん、実務面でも汎用的読解力がないとメールの意味を読み違えて発注ミスをするといったことが起こりうる。リモートワークが普及するなか、メールをはじめ文章によるコミュニケーションは今後ますます増えることが予想されているため、読解力は不可欠だ。

NHKの朝ドラと大河ドラマを親子で見るといい

では、読解力を磨くために家庭ではどんなことをすればいいのか。

新井さんがまずすすめるのは、親が子供の教科書を読んでみることだ。

「親御さんは教科書ぐらいと思っているかもしれませんが、実はとても高度なことが書かれています。算数や理科でいえば、歴史上に名を残す天才たちが400年もの間に発見・発明したことが詰まっているわけですから。一語一句、読み解かなければならないことが実感できると思います」

教科書を読めば自分が子供のときにどこでつまずいたかを振り返ることもできる。子供も同じところでつまずきやすいので、その部分の読解を親子でやり直すのもいいだろう。

「テストが戻ってきたときには、点数にばかり注目せず、答え合わせを学ぶ機会だとプラスに受け止めましょう。×がついた問題を自力で解き直せるようならばうっかりミス。そうでない問題は、内容が定着していないか、問題を読む力や考えをまとめる力が不足しているはずです。答えを読んでなぜ自分は間違えたのかを考えたうえで、解き直させましょう。答えの丸写し、丸暗記では、学ぶ力はつきません。でも、自力で答え合わせをする習慣がつけば安心です」

日常生活の工夫や心がけでも、読解力を磨くことはできる。特に語彙量は家庭環境によるところが大きく、小学校入学時点で3〜4倍の差がつくこともあるそうだ。

「一番におすすめしたいのは、時代劇と朝の連続テレビ小説と大河ドラマを親子で見ることです。大事なのは親が本気でハマること。すると子供も興味を持ちます。こういうドラマは日常では聞かない言葉や言い回しが溢れ、自然と語彙が増える。幕府、内戦、寺子屋といった単語も実感しながら覚えられますし、歴史観も身につきます」

そのほか、新井さんから挙がった日常生活の工夫や心がけが、次ページの一覧だ。どれも今日からできそうだ。