男性よりも長生きリスクの高い女性

少子化が進み、長生きリスクが深刻化しているのは男性ではなく女性です。

2019年の出生数は前年度から約5万人減少し、第2次世界大戦後最低の86万人となりました。この数は、明治42年(1909年)ごろと同じレベルです。現在アラフィフの団塊ジュニア以上の中高齢人口が多いという過去の人口遺産のおかげで、今はそれほど総数レベルでは人口が減っているようには見えないかもしれませんが、足元の出生数は「半世紀で半数以下」にまで落ち込んでいるのが現状です。

イギリスやフランスのように、出生率が1.8や1.9くらいのレベルで、子どもが少しずつ減っていくのであれば社会保障上の問題は出にくいのですが、日本のように1.5以下という出生率は低すぎます(統計的に超低出生率といいます)。現在の40代が高齢者になったとき、日本は税金で支えられる高齢者層と、その税金を捻出する若年層のバランスが取れる状態ではなくなることが目に見えており、今のままでは老後の社会保障で現行水準を維持することに期待はできません。このままでは税収不足で、生活保護の仕組みさえ持続することが難しいかもしれません。

こうした状況の中で、男性よりも女性は長生きです。男性が婚期を誤解しているために結婚市場に出遅れることによって、20代男女のマッチングは難しくなっており、結婚市場における20代男女のプレーヤー割合のアンバランスが未婚化解消の大きな壁となっています。日本では未婚化は出生数の減少に直結しているため、人口の支えられる側の世代と支える側の世代のアンバランスが進み、男性よりも平均寿命の長い女性の方が老後苦しむ長生きリスクが高くなるのです。

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過保護すぎる母が「結婚できない男」を作る一因にも

少子化の原因である未婚化は、男性に強く見られているわけですが、その男性を旧世代の女性が育てていることも、「結婚できない男性」が増えたかげにはあるような事例が少なくありません。

都会では、地方から上京してきて一人暮らしをしている独身男性も多いのですが、地方の独身男性の多くは親と同居している傾向にあります。家賃不要、親の車も使える、身の回りの世話など手厚いサービスをしてくれる母親もそばにいるわけです。結婚相談所に30歳過ぎて現れる男性には、結婚相手の理想像をあたかもこのような手厚いサービスをしてくれる過保護な母親の若返り版ととらえているかのような男性も見受けられます。

もし成人してから一人暮らしであれば、誰かと同居して2人世帯になる経済的メリットは感じやすくなります。OECDの計算では、1人暮らしだった人が2人暮らしとなると、その生活費は2倍にはならず、約1.4倍にしかなりません。1人暮らしだった時にくらべて、1人当たり生活費が70%程度に減るのです。

ところが、元から親と同居しているとなると、結婚に経済的なメリットを感じることは難しくなります。過保護すぎる母親から離れる前提の結婚である場合は、身の回りのことをすべて自分でやらなくてはならなくなるかもしれません。結婚のデメリットが多く感じられるようになってしまうのです。

「結婚して独立するのはソン」ということになると、結婚相手には、「嫁に来て親と同居をしてほしい」という思考になりがちです。でも、今どきそんな結婚を望む若い女性は非常に少ない状況です。結婚の条件として、若い女性ほど親との同居を拒む女性が結婚相談所でも主流となっています。