新たな自動車の生態系構築に向けて
多様なリッチコンテンツが楽しめるクルマを実現するためには、さまざまなプレーヤーの連携が求められる。完成車メーカーはじめ従来自動車に関連している事業者だけでなく、例えば映像制作やゲーム制作といった、コンテンツをプロデュースする事業者の巻き込みが必要だ。コンテンツプロデューサーが積極的にクルマを構想することも望ましい。
日本には影響力の大きいコンテンツが数多くある。「ガンダム」「マリオ」「キティちゃん」など世界的なキャラクターを擁するゲームや映画・アニメ作品が豊富だ。スポーツなどライブコンテンツも充実している。これらのコンテンツが、エンドユーザーはもちろん集客施設など多くのプレーヤーに求められる時代になる。
クルマを始動させた瞬間、大好きなキャラクターが空のかなたから飛んできたらうれしくないだろうか。幹線道路を走行中、後部座席の子どもたちが動物に関する解説を聞いて「ふむふむ」と自然に学習していたら、親冥利に尽きるのではないだろうか。全天空型の映像・音響環境があれば、軒先に止めた自家用車に乗り込んで、その空間で世界中の仲間との同時通信によるシューティングゲームなどを楽しみたくなるのではないだろうか。
クルマはコンテンツにとっての新たな顧客接点となる
これらはすべて、新たな産業生態系のもとで実現する。その生態系でのカネの流れは、いち早く動いたプレーヤーが押さえるだろう。10年後に向けての競争が始まる。
もちろん最終的にはグローバルな仕組みとなるが、その起点が米国西海岸になるのか、中国になるのか、あるいは日本となりうるのか、その違いによって生態系の構造も大きく変わるはずだ。
クルマは、コンテンツにとっての新たな顧客接点となる。自動車関連メーカーにはコンテンツ側との役割分担のあり方を模索することが求められる。そしてコンテンツプロデューサーには、自ら新たな生態系を創るべく動き出すことが望まれる。