なぜ市場原理は機能しなかったのか

そうした失敗が明白になってきたのはもう5年以上も前ではなかったか。そうであれば、日本国内の多すぎるプレーヤーを整理して、大胆な産業再編をするしかない、と誰でも思うのだが、再編をしかけるにはどこの企業も単独では力不足だし、そのうえ、雇用のことを考えると手が打ちにくい、という状態が続いていた。どこかが撤退あるいは売却をして、プレーヤーの数が減ることを待っている、という消極的な待ちの対策しかとりようがないと思われていたのであろう。

その揚げ句の果てに、10年の6月になってやっと、NEC・日立製作所・カシオ計算機の事業統合会社が正式に発足した。そして二週間と置かずに、今回の富士通・東芝携帯電話事業統合の報道なのである。

しかし、遅すぎる。総務省にICT国際競争力懇談会がつくられたのは06年10月で、その後この懇談会は大臣直属のICT国際競争力会議へと格上げされた。この一連の会議に私もメンバーの一人として参加していたが、ここに書いたような認識は当時すでにみんなが共有していたと思う。しかし、会議の場で表立って「大胆な産業再編をすべし」という発言をするのは、私のような利害関係のない学者だけだった。無理もない。このコラムに企業名が登場している企業のほとんどの社長あるいは会長が会議のメンバーなのである。