櫻井よしこは、8月9日の『産経新聞』で「今回の事柄を、現行の皇室典範の枠の中で改定することを否定されていることも感じた。国民の側としては、よくよく考えなくてはいけない」「政府は、悠久の歴史を引き継ぐ、ゆったりと長い大河の流れを見るようにして、このたびのお言葉について考えなくてはならない。軽々な変化は慎むべきだ」と天皇が歴史を知らずに軽はずみな発言をしたとばかりに、こきおろす。

日本の歴史において、天皇陛下に弓を引いたものを「保守」と呼んだ事例はない。ところが、日ごろは「保守」を自称する者が、一斉に牙を剥いた。

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批判を始めた3つの理由

なぜ「保守」が天皇陛下に説教めいた批判を始めたのか。理由は主に3つある。

1つは、学力不足である。天皇陛下個人や皇室に対し敵対的な者は「保守」ではないとの事実を知らないのである。一応、プロでは少なかったが、「ネトウヨ」のファンには多発していた。ましてや、「天皇陛下にモノを申すときは、死を覚悟して諫めるときだ」との常識を知るものなど、ほとんどいない。

さすがにプロの言論人は私が「天皇陛下にモノを申すということは大変なことですよ」とドスを利かすと、全員が黙ったが。

2つは、「天皇は護憲でリベラル」との思い込みがある。何を根拠に?

平成の御世代わりの際、即位式で「憲法を遵守し」と一言述べたのが、きっかけだ。政治の常識を知る者ならば、「まさか天皇陛下が即位式で憲法改正などと言えるはずがない」と即座に理解できよう。

ところが、情緒だけで生きる「保守」は、現実よりも「占領憲法を打破してくれ」との自分の想いを天皇に託す。そして裏切られたと思い込み、愕然とする。そこに「保守」言論人が紙媒体やネットで「天皇は護憲でリベラルだ。その証拠に……」と始めると、それが事実だと認識する。

文字や映像に残らない場での無遠慮な発言

そして、天皇や皇族への個人攻撃を始める。少なからずの「保守」が、かつては「美智子妃バッシング」に加担したし、今は「秋篠宮家バッシング」に狂奔している。

皇室通を自称する外交評論家が、「天皇が『俺は疲れた、休みたい』と言い出すとは何事か。地方行脚だって、テメエが勝手に始めたんだろうが」と後輩の若い言論人に言い出す。それが「保守」の楽屋裏だ。

3つは、「我らが安倍さんに逆らうものは敵」との信念である。どうやら安倍内閣は譲位に反対らしいとの情報が流れると、「保守」言論人は天皇陛下を「安倍首相に逆らう敵」と見做した。そして、あらゆる手段で攻撃を加える。

さすがに表媒体だと、歴史にかこつけるなど、「保守」の立場からの諫言を装う。さすがに産経新聞や「保守」系月刊誌の読者は高年齢層が多く、陛下や皇室への直接的な批判は嫌うからだ。

だが、文字や映像に残らない場では遠慮が無い。中には講演で、「天皇は痴呆症だから、あんな馬鹿なことを言い出した」と吹聴した安倍御用言論人もいた。その人物は、有識者会議に呼ばれて、滔々と譲位反対を述べて帰った。他にも聞くに堪えない罵詈雑言をいくらでも並べられるが、自重する。