「保守」が、「天皇は憲法を守れ!」と言い出した

安倍内閣は、有識者会議を招集した。さすがに天皇陛下が国民の衆人環視でおっしゃったことを覆すこともできず、かつ圧倒的多数の国民が賛成の中では、安倍内閣も譲位に賛成せざるを得ない。

倉山満『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社新書)
倉山満『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社新書)

問題は、日ごろ政権を支持してくれる「保守」のガス抜きだ。「保守」言論界のおもだった面々を呼んで言いたいことを言わせ、もっともらしい人物に賛成させて「あの人が賛成したので」と幕引きを図ろうとした節がある。

政府が「有識者」を招集する場合、本当にその識見を尊重するなどありえず、最初から政府の意向を忖度できる人間だけ呼ぶのは常識だ。ただし、賛否が分かれる問題の場合、一定数の反対派を呼んでおくが、決定が覆らないように最初から調整しておく。

会議では、平川祐弘、渡部昇一、大原康男、八木秀次が予想通り反対。八木は延々と「天皇は憲法を守れ」との論陣を張った。

ただ、櫻井よしこまでが反対を表明した時には、どよめきが起きたと報じられた(『産経新聞』平成28年11月14日)。これでは、「保守」の枠で呼ばれた有識者全員が譲位に反対となってしまう。

最終的には、百地章が賛成に転じて、事なきを得た。百地は言論人としては譲位反対だったはずだが、政権を窮地に陥れるような真似はしない意味での大人だった。

天皇陛下に弓を引くものを「保守」とは呼ばない

なお、この年の11月23日にチャンネル桜は「皇室・皇統を考える国民集会」を行った。この日は、皇室において新嘗祭が行われる大事な日である。よりによって「ネトウヨ」の最古参が、この日に「譲位反対集会」を行った。

ここで外交評論家の加瀬英明が先帝陛下について「今の陛下は戦後のお育ちですから、やはりちょっと我が儘がお出になったのだろうと思います」と言い切った。

小著『日本一やさしい天皇の講座』(扶桑社、2017年)は、このような「保守」のあまりの非礼と無知を諭す目的で書いた。

甘かった。あのような書き方の易しい本でも、「保守」や「ネトウヨ」の多くは読みこなせなかったのだから。

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