それだけに、思い切った荻田流経営に専念できた。それは、(1)社員を疲れさせないマネジメント、(2)お客様目線の徹底、(3)全員が目標に挑戦する風土――の3つに集約される。
もともとアサヒは、行動力と団結力が身上の会社。泉谷も酒類本部長になった頃「会社を覆う蓋を外して、社員が自由に行動できる社風に戻していきます」と語っていた。荻田も「社員は、夢を語れる個人であってほしい。それをサポートするのが私の、そして会社の役目なんですよ」という。
とはいえ、ビール市場は少子高齢化などの影響もあり、ますます縮小している。加えて、昨年秋からの不況で、消費者の可処分所得は減ってしまった。大手4社の09年の市場成長見通しは、いずれも2~3%のマイナスだ。
アサヒビールの08年12月期連結決算は、売上高が1兆4627億円(0.1%減)、営業利益は945億円(8.7%増)の減収増益だった。これを受けて、今期は販売目標を2年ぶりにプラスに転換、前年比0.8%増の1億8300万ケースとした。ビールと発泡酒でそれぞれ前年比4.2%、13.7%の減少を見込む一方、新ジャンルを同23.0%と大幅に伸ばす考えだ。
「これは非常に大きなメッセージを発信しているつもりなんです。去年はマイナスの計画を立てて、そこに若干届かなかったわけですけれど、厳しい経済環境だからこそ、今年は成長をめざすという意思を内外に示したんです」(荻田)(文中敬称略)