2008年に「解散先送り」を強く進言したのが菅氏だった
一方、野党側は立憲民主党と国民民主党の合流による新党結成で期待値を高め、上昇気流に乗りたい考えだったが、結党のタイミングが「菅新政権」のタイミングと重なってしまった。注目度は極めて低い船出となる。
両者の立場をにらめば、今秋から暮れにかけての衆院選を政権与党側が模索する意味は十二分にあるのだ。それに向けての大義を「菅政権の正統性を問う」と設定するとすれば、8月28日以降の自民党の戦略は極めて高度な政治判断だったといえる。
2008年、麻生氏が首相に就任した時、麻生氏は発足時の高支持率を背景としてすぐに衆院解散をする考えだった。しかし、その頃、リーマンショックが起きたため解散を見合わせたほうがいいとの意見が高まり、麻生氏は解散を先送りした。このとき最も強く解散の先送りを進言したのは、当時、党の選挙責任者だった菅氏だった。
ここで解散の機会を逃した麻生内閣の支持率は、どんどん下がっていき、翌年の衆院選で大敗、民主党政権が誕生し、自民党は下野する。
あれから12年。リーマンショックとコロナ禍という大きな危機の中、新政権が誕生するという意味で、現在と政治状況はとても似ている。12年前の体験を踏まえ、菅氏はどういう決断をするのか。結果が見えてしまった総裁選の行方よりもはるかに興味深いテーマではないだろうか。