中国の脅威を育てたのは米国だ

もちろん、中国の目と鼻の先にあり、中国の軍事的・経済的な脅威にさらされているわれわれ日本人が米国からの軍事的支援を必要としていることは明らかだ。このこと自体に反対する日本の人々もいるが、それは現状認識としてあまりに論外なので相手にしない。

むしろ、ポンペオ国務長官が述べているように、今後さらに自由世界の国々の対中協力は進むだろうし、日本もその一翼を担って進めていくことになるだろう。

ただし、筆者は米国の態度変更については全く信用することができない。ポンペオ国務長官が自ら演説で言及していたように、現在の日本にとっての中国の脅威を育ててきたのは紛れもなく米国だからだ。

第2次世界大戦で敗北した日本は戦後奇跡の復興に成功し、米国をしのぐ勢いの経済成長を一時期には成し遂げた。ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた日本に対して、1980年代から1990年代まで米国は強烈な圧力をかけて日本の経済覇権に潰しをかけてきた。米国が日本の軍事力強化を陰に陽にけん制し、周辺国も便乗してきたことから、日本は自衛隊という中途半端な軍事力しか持つことしかかなわなかった。

在日米軍は周辺の野蛮な国々に対する抑止力として機能してきたことは認めるが、同時に米国は東アジアにおける平和国家日本の覇権を抑えるべく、周辺国とのパワーバランスを取らせる政策を実行してきたと言えるだろう。

米国は同盟国・日本をないがしろにしてきた

その一方で、米国は中国を第2次世界大戦の戦勝国として核保有を認め、米中和解以降は中国の人権侵害などに目を瞑り、WTO加盟等の驚異的な経済成長の後押しを行って、共産中国を日本にとっての現実的な脅威として目の前に出現させるお膳立てをしてきた。

その結果として日本よりも強大な軍事力・経済力を持った共産中国が誕生しただけのことだ。米国が日本という同盟国パートナーを蔑ろにし、経済的な果実に釣られて中国という脅威を育てたことをわれわれ日本人は決して忘れるべきではない。

日本の心ある人々は、中国の人権抑圧状況、そして軍事的脅威について米国よりもはるか以前から認識してきた。たしかに、米国は朝鮮戦争で中国と戦火を交えたものの、米中和解以降も常に中国からの内政干渉的なアプローチにさらされてきた日本とは対中脅威認識は全く異なるものがあった。その日本の忠告を無視してきたのは米国だ。