協議会を持続させるための委託

また、サービスデザイン推進協議会の実績作りが必要だった可能性がある。委託事業の場合、単年度で事業が終わってしまう。ある年度に委託事業があったとしても、翌年度に同じ事業が実施されるかどうかは不明なのである。事業が終わってしまうと、委託先は、新たな仕事を確保する必要がある。協議会を起ち上げた以上、協議会自体を持続化させる必要があるのである。

サービスデザイン推進協議会は、設立以降、経済産業省の事業を立て続けに受託している。過去の受託実績が豊富な組織であれば不自然ではないが、設立年の浅い組織が受託できるのは、経済産業省側の何らかの意図が働いていた可能性がある。

また、新型コロナウイルス対応のために過去最大級の景気対策が必要だったことが、結果的にこの委託事業の設立を容易にしてしまった可能性がある。景気対策の金額を増やすために、新規事業を作らなければならなかった、ということである。新規事業を立ち上げて実施すれば、景気対策に取り組んでいる姿勢をアピールしやすい。

「丸投げ」「再委託」を防ぐための処方箋

こうした不透明な委託事業をなくし、国民に理解を得られるためにはどうすべきか。経済産業省はすでに「外部有識者による検査実施」を打ち出し、透明性をアピールしている。通常は担当者レベルで実施するものであることから異例の対応である。

しかし、サービスデザイン推進協議会の業務執行理事と中小企業庁長官の関係性が週刊文春で報じられており、これだけでは国民の疑念を晴らすのは難しいだろう。

今後、最も起こり得る事態は「中小企業庁長官の辞任」である。そもそも6月末から7月頭にかけては例年、幹部クラスの人事異動の時期である。通常の人事異動として処理してしまえば、話をうやむやに済ますことができてしまうだろう。

いずれの選択肢も不十分な対応であり、国民の理解は得られそうにない。筆者は、委託事業の根本的な問題解決こそ先行して行うべきと考えている。聡明な読者がお気づきの通り、委託事業の取り扱いに全く制限がかかっていないことが最大の原因である。そこにメスを入れなければ、この問題は再び繰り返されることになる。

各省庁は「再委託制限の統一ルール」を急げ

これは経済産業省だけの問題ではない。中央省庁をみても、制限のない省庁が多いため、最終的には、国全体で再委託制限の統一ルールを設ける必要があるだろう。これにより、資金使途がある程度は制限できるようになるだろう。