早慶のウラその4「仕事も趣味も、正真正銘のパチンカスの早大OB」

4番目は依存症に悩む早大OBだ。パチンコメーカー勤務の富良和ふらわさん(仮名)は、29歳にしてパチンコに生涯2000万円以上をつぎこんだ「(自他ともに認める)パチンカス(パチンコ依存症)」である。

どら焼きすら買えないときは水道水でやり過ごしていたという。(撮影=万亀すぱえ)

パチンコデビューは5歳のころゲームセンターで。パチンコ好きの父親に連れられて初めて一緒に玉を打ったとき、強い光と音が織りなす非日常感に感激したという。中高生時代は、休日のたびにおじさんに交じって開店前のゲームセンターに1人で並び、一日中パチンコを打つ生活を続けた。高校3年の受験生時代も、塾の帰りに寸暇を惜しんで週3~4回、1回あたり2~3時間ゲームセンターのパチンコ台と向き合う。わずかな勉強時間の中で、パチンコで鍛えた集中力を発揮し、第1志望の早稲田大学人間科学部に現役合格を果たした。合格発表日の朝もパチンコ店に並んでいた。

「父親と2人で並んでいたのですが、そういえば今日は早稲田の合格発表日だとハッと気付いて。電話で確認できるのでその場でかけたら、受かっていたんです。父親も『今日は俺が全部パチンコ代出してやる!』と言って大喜びでしたね。運を受験に全部使ってしまったのか、その日は2人でぼろ負けしましたけど(笑)」

幼少期からそこまでパチンコにのめりこんだ一番の理由は、「アニメ好きの延長」だという。

「パチンコでテレビアニメでは見られない演出が流れるのが楽しくて。大当たりまでに演出の分岐が何万通りもあるので、『次はどうやって当たるのかな』と考えながら打つのにハマってしまいました。ちなみに小中学生時代に一番好きだったのはルパン三世です」

大学では有名テニスサークルに所属していたが、パチンコを優先させるために1年間でやめた。親戚中からもらった成人のお祝い計20万円も、たった3日でパチンコに溶かした。さすがに親に激怒され、1日500円の小遣い制になった。

趣味が高じて、就活でもパチンコメーカーに応募。業界トップの会社に内定をもらったが「実力主義の多忙な社風なので、パチンコをやる時間がなくなる」という理由で辞退し、同業他社に入社した。

パチンコにお金をつぎこむため、ランチは会社近くのスーパーに売っている1個50円のジャンボどら焼きを4分の1ずつ4日間にわけて食べていた。

「実は僕、あんこが嫌いなんですけど、生きるために仕方なく。ある日特売で1個39円になっていたので買い占めたら、上司から『職場の共有の冷蔵庫をジャンボどら焼きだらけにした奴は誰だ!』と怒られました」

結婚後は月3万円の小遣い制。当然、パチンコ代は足りないので同期社員たちに頭を下げて100万円ほど借金をしている。

「それでも足りなくて、嫁の財布からお金を抜いたりもしていました。気付かれないように毎日1000円ずつ。でも、ある日1万円札しか入っておらず、仕方なくそれを抜いたらバレて激怒され……。『どうしても今日髪を切りたかったんだ』って言い訳しました」

パチンコの楽しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと語る富良和さん。取材後、近所のパチンコ店で未経験の筆者に一から打ち方を教えてくれた。「あの、さすがに今日のパチンコ代って経費で落ちませんよね……?」という一言から切迫感が伝わってくる。家には妻と生後4カ月の赤ん坊がいる。たまに勝ったときに借金を返しているというが、勝つのは10回に1回程度。子供の将来のためにも、彼自身が早く確変状態に入り借金を完済できるのを願うばかりだ。