早慶のウラその1「就活グループに入れず、地獄を見るハメに」

「慶應義塾は『最も就職に強い大学』のひとつとされています。実際に毎年の就職状況は高い実績を残しています」――慶應義塾大学の公式HPにはこう書かれているが、実際の就職先には「格差」が存在する。

入社してわずか半年で会社の不祥事が発覚し、その影響でリストラの憂き目に遭った安田さん(仮名)は、これでも慶應義塾大学理工学部の卒業生だ。

「僕、昔からえげつないぐらい面倒くさがりで。4年になっても就活にやる気が起きなくて、業界分析もせず手当たり次第にエントリーした結果、書類選考すら落ち続けていましたね」

別の慶應OBによると、やる気のある慶應生は就活の時期になるとグループをつくって情報共有をするという。だが、そこにあぶれると安田さんのように情報弱者となり就活で惨敗する。

いよいよ内定が1つもないというところで、友達に紹介された不動産会社を受けてみた。面接では「志望動機はお金です」と堂々と言った。その会社は賞与が完全歩合制で、そこが安田さんの目に魅力的に映ったのだ。

「受験勉強のときもお金がモチベーションでした。いい大学に行けばいい企業に就職できて、お金がたくさんもらえるじゃないですか。今この受験勉強を時給換算すると何万円になるだろう、って考えてましたね」

内定が出たが留年し、書面上はアルバイトとして入社。だが、与えられた仕事は正社員と同じだった。最初に配属されたのは、投資用物件の営業の部署。資料請求をした個人客に電話をかけ、商談のアポをとる仕事だ。

事件が起きたのは、安田さんが入社して半年ほど経った頃だ。会社が不動産の売買契約を締結する際、買い主が提出した融資書類を改ざんして金融機関に提出していたことが発覚したのだ。会社は宅地建物取引業法に基づく業務停止命令を受け、安田さんがしていた個人営業も停止となった。

「売却後の物件を仲介会社に紹介する間接営業の部署に異動になりました。当時は不祥事発覚直後で社内がすごく混乱していて、社員の管理をするどころではない状況でした。僕は『今なら休んでもばれないぞ!』と思って2週間無断欠勤しましたね」

その後も、営業先には回らず家に直帰して寝てばかりの毎日。会社には虚偽の営業レポートを提出していた。そんな生活を1年続けていたところ、細々と取得していた大学の単位をようやく取り終えて卒業できることに。3回目の4年生の秋だった。

「でも、ちょうどそのタイミングで希望退職の募集がありました。不祥事が発覚してから賞与もカットで、ずっと経営が厳しかったんですよね。退職金として年収の4分の1の額がもらえるし、働くのも面倒なので迷うことなく手を挙げました」

退職してから現在までの約半年間、失業保険と退職金で食いつないでいる。自らの状況を「まじでやばい」と語る安田さんだが、転職活動はしていないという。「最近はトランプのポーカーにハマっています。早く大会で優勝して、プロとして食っていきたい」。

そう語る彼に未来はあるのか。