【インプラント】20万円以下は素材の質に疑問

失われた歯を補うには入れ歯のほかにも、隣の歯に装着する被せ物と連結して人工歯を固定する「ブリッジ」をはじめ複数の方法がある。そのなかでも近年、知られるようになったのが「インプラント」。あごの骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する。自分の歯と遜色なく、しっかりと噛めるのが大きなメリットだ。また、入れ歯などと違って毎日、口から外して掃除するといった面倒なケアもいらない。

デメリットもあり、その筆頭が自由診療による高額な費用だ。アンケート調査でも、治療費が20万円以上かかった人が4割以上を占め、なんと全員が費用面での不満を訴える。今枝さんは、「インプラントは、品質が予後を大きく左右します。素材であるチタンが良質で、信用できるメーカーの製品は、1本分の治療費が40万~50万円というケースもあります」という。

治療費20万円以下を売り物にしているクリニックもあるが、インプラントの品質は保証の限りではないこともあって要注意だ。それに半年に1回以上の検査やクリーニングも欠かせない。「メンテナンスを怠ると、インプラントの周りの歯茎や骨が歯周病菌に侵されて、インプラント周囲炎という病気になり、最悪の場合、インプラントを外す必要があります」(今枝さん)。

インプラントの治療は、歯がない状態からスタートしても、人工歯根を埋め込んだ後、あごの骨に馴染んでから人工歯を装着するので、最低でも2~3回の通院は必要で、治療期間は3カ月以上かかるのが普通だ。ただしアンケート調査では、1カ月未満で治療を終了したと答えた人が21.1%いて、今枝さんは、「抜歯後即時インプラントを指すのかもしれません」という。

「前歯を抜くと見栄えが悪くなるので、インプラントを選ぶケースがあります。そこで歯を抜くのと同時に、その跡に人工歯根を埋め込み、隙間を人工骨で塞ぐという治療方法です。歯茎も痩せないので、骨量の多い若い患者さんには、おすすめです」

高額でハイリスクなインプラント手術を受けるなら、技術と経験が豊富な歯科医を選びたい。今枝さんは見極めるポイントを次のように説明する。

「インプラントの治療実績がどのくらいあるのかを質問してみましょう。3次元CTなどで骨の状態を事前に検査するかどうかも要チェック。あごの骨がしっかり残っていないと、インプラントの適応にならないからです。また使っているインプラントのメーカーを尋ねてみてもいいでしょう」

そうした質問に丁寧に答えてくれるかどうかでも、歯科医の信頼性を測れると、今枝さんはアドバイスする。