【虫歯】1000円以内、1回ですむ治療
虫歯は本数が多かったり、進行していれば、治療回数や治療費も増える。アンケート調査では、治療回数が1~2回と答えた人が合わせて22.4%いた一方で、「通院回数が多い」という不満を持つ人が約3分の2に上った。虫歯が悪化してから治療する人が多いのだろう。治療にかかる自己負担額は、1万円未満が約3分の2を占める。
虫歯が歯の表面を覆うエナメル質か、その内側の象牙質までで止まっているのなら、虫歯部分を詰め物や被せ物で補修すればすむ。そうした軽い虫歯の治療で思い浮かぶのが「銀歯」である。金銀パラジウム合金を用いた補綴物だ。歯科医の今枝誠二さんは、「虫歯の周りを削って型を取り、銀歯を作ってから削った部分にはめるので、少なくとも2回の通院が必要です」と説明する。だが小さな虫歯であれば、おすすめなのは「コンポジットレジン」だ。
「特殊な樹脂を虫歯部分に流し込んで固めます。歯を削る範囲を最小限に抑えられるし、歯との接合部分に微細な隙間ができやすい銀歯と違って、歯と樹脂がピッタリくっつくので、虫歯が再発しにくいのです。1回の治療で終わるのもメリット。良心的な歯科医なら、コンポジットレジンでの治療をすすめてくれるでしょう」(今枝さん)
しかも保険が利き、コンポジットレジンの治療費(自己負担が3割の場合)は1本分で700~1000円だという。ただし大きな虫歯になれば、従来通り補綴物で補修する。保険診療なら1本分の治療費が2000~3000円(同)の銀歯だが、最近では原材料費が高騰しているため、銀歯の加工を中国の業者に発注するケースがある。
しかし、日本のような歯科技工士の資格制度がなくて品質が疑問視されるうえに、完成までの時間もかかる。型取りから完成まで3週間以上かかるようだと中国製かもしれない。一方、自由診療だが「セラミック」という選択肢もあると、今枝さんは指摘する。
「歯に近い材質なので、金属と違って体に馴染みやすく、見た目も自然で変色しにくいというメリットがあります。1本分で詰め物なら4万~6万円、被せ物なら約10万円かかりますが、長持ちします。治療後5年ほどで再治療になるケースも多い銀歯と比べて、コストパフォーマンスは悪くありません」
虫歯が象牙質の内側の歯髄(歯の神経や血管が通っている部位)に達していれば、神経を抜いて洗浄・消毒する根管治療の後、被せ物で補修するといった治療を行う。その根管治療だけで2~3回以上の治療を行うこともあり、「アンケートで、治療回数が3回以上と答えた人の多くは、重い虫歯ではないでしょうか」と今枝さんは話す。