妊娠中の「小麦や卵」が原因ではない

「お母さんが妊娠・授乳中に、小麦や卵、ピーナッツなどの代表的なアレルゲンを食べると、子どもがアレルギーを発症しやすくなる」という説がありますが、すでに否定されています。

確かに一昔前までは医療機関でも「妊娠・授乳中は、卵やピーナッツを除去しましょう」と指導されることがありました。アトピー性皮膚炎のある子どもの血液検査をすると、食物やダニに対して感作されていることが多いため、これらが発症の原因と思われていたからです。

しかし、現在では、妊娠・授乳中の除去食はアトピー性皮膚炎の予防にはならないことが多くの研究で明らかになり、推奨されなくなりました(※1)。むしろ妊娠・授乳中に、お母さんの栄養が偏ると、子どもが小さく生まれやすくなることもわかってきたのです。

最近まとめられた子どものアレルギー発症に関連する妊娠中の要因対策としては、喫煙を避け、アルコールを控え、魚や発酵製品をできたら定期的に食べる、そんなところです(※2)

つまり、バランスのよい食事を心がけておけばいいのです。

「掃除が足りないからアトピー」とは言い切れない

一方、環境整備に関してはどうでしょう。アトピー性皮膚炎の子どもの多くが、ダニなどに感作されていることは確かです。「すでに発症しているアトピー性皮膚炎」に対して、ダニを減らすような環境整備により症状が改善したという報告もあります(※3)。しかし、アトピー性皮膚炎の発症を予防することに関しては、多くの研究結果をまとめると明らかな効果は得られていません(※4)。ですから、発症してから掃除をするのは推奨できますが、掃除が行き届いていないからアトピーになったとは必ずしもいえません。

出産時のお母さんの不安が子どものアトピー性皮膚炎の発症に関係しているのではないかという報告もあり、私はストレスを減らせるように配慮するほうがいいのではないかと思っています(※5)