国は「コロナ疎開」での感染拡大を恐れた
一方、国は厳しすぎる要請をして首都を縛ると、日本全体の経済に甚大な影響を及ぼすことを警戒している。政府・自民党のもとには、休業要請される可能性のある業界関係者が、対象から外すように要請しているとの見方もある。業界団体の陳情で、緊急事態下の対応が変わるようなことがあれば由々しき事態だ。
さらに言えば、過度に都民の自由を縛ると、都民が地方に流出する可能性があるのを国は心配している。いわゆる「コロナ疎開」だ。
東京で陽性となった都民が他の道府県に移動、移住し、それが原因で感染が全国規模で広がるのは、国にとって最悪のシナリオなのだ。
ここまでは、立場の違い上、ある程度やむを得ない食い違いともいえる。
だがこの問題は、国と都、安倍氏と小池氏の意思の疎通が乏しいことが底流にある。
安倍氏と小池氏の「微妙な関係」が緊急事態に露呈した
小池氏は2006年、第1次安倍政権で首相補佐官に就任。そのころまでは良好な関係だったが、次第に疎遠になった。
安倍氏が復権した2012年の自民党総裁選で小池氏は、安倍氏の天敵ともいえる石破茂氏側についた。2016年の都知事選では自民党などが推す増田寛也元総務相を蹴散らして勝利。安倍政権は大きな傷を負った。
小池氏は最近は自民党に接近。7月の都知事選では自民党も小池氏を推す方向となり、雪解けは進んでいた。しかし、2人の間にはまだ、わだかまりが残る。それが、緊急事態宣言の日に露呈したともいえる。
都の方針が発表されるのは10日、実際に休業要請を求めるのは11日からとなる見通し。当初は8日から始める予定だったから3日スタートが遅れることになる。
たかが3日というなかれ。緊急事態宣言の効力がある期間は5月6日までの1カ月。3日間は、その1割にあたる。この遅れが重大な結果を招かないのを願うばかりだ。