地域通貨は何人で使うのがちょうどいいのか

【柳澤】これを持っていて使うだけでこの街に住んでいて楽しいってことになるのはわかるんですけど、この楽しさが実感できるようになるにはどれくらいの規模が必要と思いますか?

【影山】いま、500人ぐらいの参加者がいます。このくらいの人数がいると、こっちが渡したいと思ったときに受け取ってくれる人と出会える確率がかなり高まります。僕はこうやってぶんじを名刺入れに入れているんですが、使える機会が少ないと入れている意味がないとうか……。

【柳澤】入っていること自体忘れちゃいますもんね。

【影山】でも、街のどこかで使う機会があると思えばいつも持っていようと思う。国分寺は12万人の都市ですけれども、感覚的に500人というのはいい数字になってきたなと感じています。もう1つ大事なのは多様性という意味で、お店をやっている人、お客さんで来る人、さらに野菜をつくっている人、それを運んでくる人など、いろんなかかわりをする人が街の中にいてくれることが、1回使って終わりじゃなくて、その先の2次流通みたいなことも可能にしてくれていると感じています。

【柳澤】だから500人ぐらいでも十分面白い体験でもあるなという感覚があるんですね。逆に12万人全員が使うとつまんなくなるような……。その辺ってどのぐらいの感じなんですかね。

【影山】そこは僕らも未知の領域ですけど、可能性としては通貨がいくつかに分岐してくことはあるかもしれないと思います。

【柳澤】それは場所ごとに、とかそういう意味ですか?

【影山】場所ごとかもしれないし、テーマ的に地元の農業を応援するなど食にまつわるものを対象にした通貨を設計したり、場合によっては自然再生可能エネルギーだったりを地域の中に流通させていく局面で使うのに向いているものとか。10万人ぐらいの単位だったらそれ1つの通貨でできるかもしれないですが。

撮影=プレジデント社書籍編集部
(左)面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔さん、(右)クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店店主の影山知明さん

コミュニティが流通の土壌になった

【柳澤】僕らが「まちのコイン」を去年1カ月間実験したときは参加者が700人ぐらいだったんですけど、700人でも十分手ごたえはありました。どこまで広がるのか、どのぐらいだと面白くなくなるのか、というのはわれわれもわかってないんですけど、やっぱり「おらが街」感があるエリアの中で使われるというのが面白さを保つ秘訣かもしれないですね。

【影山】そうですね。僕、植物のモチーフでものごとを捉えることが多いんですけど、土があってこそ種は芽を出せると思うんですよね。ぶんじのようなシンプルな地域通貨って紙に印刷できたら誰にでもつくることはできるんですよ。ただ、そうやって流通させるには、社会関係資本という土壌が必要なんです。

【柳澤】それはもともと関係性のあるチームメンバーで始めたということですか、それともこれをやりながら仲間が増えたっていうことですか。

【影山】そこは相乗効果があると感じていて。

【柳澤】ニワトリと卵的な感じですか。

【影山】そうです。最初に集まったメンバーの狭い範囲のなかでお互い気持ちよく使うっていうことができた。そしてその環に入ってくる人が増えてくると、そことの関係性も育っていって。木が育ちながら同時に土も作っていくっていう感覚です。土がつくられていくからより大きな植物が育つ。