資金運用を目指すことは人生を豊かにする
リスクの定義に基づいて考えると、未来永劫、株価が上昇し続けることはありえない。ある程度上昇すると、いずれ相場は調整局面を迎えると考えたほうが良い。何が株価の不安定性を高める要因になるかをピンポイントで予想することも難しい。それだけに、複数のシナリオを想定しておくことがリスクへの対応力を高めることにつながる。
新型コロナウイルスのリスクとは、人の移動が制限されることによって実体経済が混乱することだ。イタリアでは経済活動が事実上の全面停止というべき状況に陥った。イタリアだけでなく世界各国で企業の収益懸念も高まっている。収益が悪化すれば、財務の健全性を維持することが難しい企業も増える。不良債権の処理が十分ではないイタリアやドイツなどでは、今後の展開によって金融システムへの不安が高まることも考えられる。
リスクの概念を理解した上で大局的に今後の展開に関する複数のシナリオを描くことは、資産を守るための重要な取り組みの一つだ。将来のシナリオを考える際には、経済、政治、国際情勢など、多くのことを調べ、理解しなければならない。資金の運用を目指すことは、新しい知見を吸収し、人生を豊かにするために有効といえる。
分散によるリスク縮小の意味
実際に株式などに投資を行って資金を運用する際には、買い、売りともに、投資の対象、金額、実行のタイミングを分散するとよい。想定外の展開に備えて追加的な行動の余地を確保することによって、心理的なゆとりや落ち着きを保ちながら経済や金融市場の変化に対応できるだろう。
たとえば、株価が大きく下げた際は、複数回にわたって買う、反対に、相場が上昇した場合には徐々に株を売却して現金をつくっておく。その際、ある水準から株価が20%下落すれば購入し、その後さらに10%下落すれば追加で買う。一回の購入金額は余裕資金の20%にするといったように、自分なりの投資のルールを決める。
また、どの程度の損失に耐えられるか、自分自身のリスク許容度を把握しておくことも必要だ。その上で分散を意識して資金の運用を行うことで、高値掴みをしたり、急速な環境の変化に慌てふためき保有株を投げ売って損失の発生に直面したりするといった展開を避けやすくなる可能性がある。反対に、事前に自分自身のリスク許容度などを考えず、手元資金を一度にリスク資産に投入するといった行動をとってしまうと、変化への対応が難しくなる恐れがある。