日本の教育現場の救世主になれる

この調査で、学習アプリを使えば、もともと勉強のやる気のある生徒だけでなく、意欲の低い生徒のやる気や学力を高めることができることが分かった。これはカンボジアの小学校で行った独自調査であるが、日本の教育現場にも当てはめて考えることができる。

現在、日本でも教員不足が叫ばれている。朝日新聞が行った全国調査によると、2019年5月1日時点で、1241件の「未配置」があった。教育委員会が独自に進める少人数学級の担当や、病休や産休・育休をとっている教員の代役などの非正規教員が見つからないことが大きな要因だった。

そのため、教員不足は教師一人あたりの生徒数の増加につながり、生徒一人ひとりへのきめ細やかな対応を困難にするのではないだろうか。授業について行けず、置いてけぼりの生徒のフォローに手が回らず、学力のばらつき具合の拡大を引き起こすと予想される。

調査で明らかになったように、学習アプリは学力の底上げを通じてクラス内の学力格差を緩和し、「学習危機」の解決に大いに役立つ。学習意欲のある優秀な生徒にも、やる気がなくて授業内容への理解が遅れがちな生徒にも、それぞれに合った学習の進め方を行うことができる。教師が不足し、一人ひとりの生徒をケアしきれていない教育現場を中心に活用をより一層、積極的に推進していくことが必要である。

参考資料
・Banerjee, Abhijit V, Shawn Cole, Esther Duflo, and Leigh Linden. 2007. "Remedying education: Evidence from two randomized experiments in India." The Quarterly Journal of Economics, 122(3): 1235-1264
・Carrillo, Paul E, Mercedes Onofa, and Juan Ponce. 2011. "Information technology and student achievement: Evidence from a randomized experiment in Ecuador."
・Barrow, Lisa, Lisa Markman, and Cecilia Elena Rouse. 2009. "Technology's edge: The educational benefits of computer-aided instruction." American Economic Journal: Economic Policy, 1(1): 52-74.
・Linden, Leigh L. 2008. Complement or substitute?: The effect of technology on student achievement in India. InfoDev Working Paper, Columbia University.
・World Bank. 2017. World Development Report 2018: "Learning to Realize Education's Promise." The World Bank.
・Yasenia, A.(2018). Region in 'learning crises'
・Gneezy, U., List, J. A., Livingston, J. A., Qin, X., Sadoff, S., & Xu, Y.(2019). "Measuring success in education: the role of effort on the test itself." American Economic Review: Insights, 1(3), 291-308.
・朝日新聞2019年8月5日付朝刊1面「公立小中、教員不足1241件 代役の非正規見つからず 朝日新聞社調査」、3面「教員穴埋め、非正規頼み限界 特別支援学級増、産休も育休も増」

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