東京23区や近郊では売り切れ状態

日本石材産業協会のアンケート調査によると、墓地を購入する際に買い手が優先したい条件は、「価格」「自宅からの距離・交通の利便性」「墓地の種類」が上位を占めている。

1位の「価格」は当然としても、2位に「距離」がくるのは、最近の墓地開発事情と関係している。東京周辺では、民営墓地はかつて都心から50キロも離れた場所につくられていたが、バブル崩壊後は一時的に地価が下落したため、東京23区に隣接した地域に中・小規模の墓地がつくられ人気を博している。


こんなにある!「お墓」をめぐる選択肢

ただ、その後の地価上昇や墓地転用に慎重な自治体(神奈川県川崎市など)の規制強化により、都内や隣接地では人気に反して新規の墓地開発が事実上ストップしているのが実情だ。そのため、ここ1~2年は、ほとんど売り切れ状態が続いている。

アンケートでは3位の「墓地の種類」だが、これを宗教・宗派を限定するかどうかという意味でとらえると、宗教を問わない公営・民営墓地の人気が高い。逆にいえば「お寺の檀家にはなりたくない」と考える人が多いということである。

もっとも、最近は都区内のお寺が敷地を再開発することで新たな墓地スペースを生み出し、新規の墓地として売り出す例が目立つようになり、人気が高まっている。もちろん、購入するには檀家になる必要がある。その意味では、檀家になるわずらわしさよりも、近所に墓を持つ利便性のほうが優先されるのだ。

しかし、比較的大規模で宗教・宗派を問わない民営墓地なら広告を出すなどして積極的に宣伝をするが、こういった寺院墓地の場合は基本的にごく小規模の開発であり、しかも開発の主体は宗教法人なので広告を出しにくい。そのため買い手が情報を得る手段は、石材店経由など限られたものになる。そもそも絶対的な供給量が少ないこともあり、すぐに売り切れてしまうのは近郊の民営墓地と同じである。

(構成=面澤淳市)