中国が「SARSの流行」で行っていた情報隠し

問題の新型コロナウイルスは、17年前に東南アジアの国々で猛威を振るった「SARS」(サーズ=重症急性呼吸器症候群)の病原体ウイルスの仲間だ。SARSでは29の国と地域に感染があっと言う間に拡大し、少なくとも約800人が死亡した。

武漢の新型コロナウイルスについて、アメリカなどの研究者が遺伝子の配列を分析したところ、「SARSと同じベータコロナウイルスの一種だ」とする見解を公表した。

ヨーロッパの疾病対策センターも「SARSのウイルスと似ている」という見解を発表し、イギリスの研究者は「SARSのもととなったとみられるコウモリの持つウイルスと遺伝子配列の89%が一致している」と説明している。

SARSの場合、感染源地域は中国南部とみられた。しかし、中国政府の初動は鈍く、おまけに何カ月も感染者の発生の情報を出さない「情報隠し」や「情報操作」が行われ、東アジアの国々に感染が拡がり、大きな被害が出た。

イギリス研究チームは感染者を「1723人」と推計

このため、今回の新型コロナウイルスの感染でも中国政府の隠蔽体質が指摘されている。

たとえば、イギリス「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の研究チームは、昨年12月から今年1月12日までの武漢市内の感染者の人数について「1723人」と推計している。推計は武漢市の国際空港の利用者数とウイルスの特性などをベースに実施されたものというが、武漢市政府の発表の「45人」「62人」「198人」とは桁違いである。どちらが正しいのか。

沙鴎一歩はこの研究チームの推計のほうが正しいと思う。つまり、中国側の発表よりもずっと多くの感染者や患者が存在している可能性が高い。

新型コロナウイルスの感染者は日本国内でも出ている。

1月16日、厚生労働省は「武漢市に滞在していた神奈川県の30歳代の男性が肺炎の症状を訴え、新型コロナウイルスに感染していた」と発表した。日本国内での患者の確認は初めてだ。