感染者は中国滞在中に肺炎患者と一緒に生活していた
この男性は中国人。武漢市で1月3日に発熱を訴え、6日に日本に帰ってきた。神奈川県内の医療機関を受診して10日から入院し、回復して15日に退院している。厚労省の傘下機関の国立感染症研究所が検査したところ、15日に問題の新型コロナウイルスの陽性反応が出た。
これまで中国で確認されている患者の多くは、武漢市中心部の「華南海鮮卸売市場」の関係者だったが、男性はこの市場に立ち寄っていない。しかし中国滞在中に肺炎患者と一緒に生活していた。この患者から感染した可能性がある。
13日にはタイを訪れた61歳の女性が感染していたことも明らかになった。香港、シンガポール、台湾などでも感染の疑いのある事例が報告されている。
新型のウイルスに対し、人は免疫(抵抗力)を持たない。だから新型ウイルスは人の間で次々と感染してしまう。たとえば2009年の新型インフルエンザは「パンデミック」と呼ばれる世界的流行となった。
約800人が感染死したSARSに比べると、新型の毒性は弱い
武漢市の新型コロナウイルスは人から人に感染するものの、同じ部屋で生活するなどの濃厚接触なければ感染はせず、感染力は弱いようだ。しかしこの先、人から人へと次々と感染する能力を獲得する危険性がないとは言えない。
新型ウイルスの考察では「毒性」を踏まえることが重要だ。新型コロナウイルスで感染死した患者の多くは基礎疾患(持病)をこじらせて亡くなったようだ。つまり健康な人が死亡するほどの強い毒性はない。約800人が感染死したSARSに比べると、新型コロナウイルスの毒性は弱いとみられる。だが、変異を重ねることで毒性が強まる危険性もある。
肝心なのは治療方法だが、いまのところ特効薬はない。ワクチンもない。治療は熱を下げたり、咳を止めたりする対症療法が中心となる。症状を緩和すれば、免疫は高まるので対症療法を侮ってはならい。私たちの身の回りに存在する通常のコロナウイルスは風邪の病原体だ。予防策としてはインフルエンザと同様、手洗いやうがいを欠かさないこと、普段から体力を付けておくこと、感染の疑いが出たらすぐに専門の医療機関を受診することである。