予算不足「インターハイ開催危機」が話題に上ることはない
東京五輪のマラソンコースについては多くのメディアが取り上げているが、インターハイ開催危機はなぜか話題に上ることはない。今年7月にはクラウドファンディングも実施した。著名アスリートのプッシュもあり、SNSでプロジェクトは拡散された。921万1000円が集まったものの、最低目標額の4000万円には届かなかった。
「1競技も中止しないで、どんなかたちでもいいのでインターハイを開催したいと思っています。あと3000万円あれば、なんとかギリギリ。大会だけは開催できるかなという状況です。どこかの企業さんが1億円をボンッと出してくれたら、それはすごく大きいですね」(西塚事務局長)
7億円の寄付金を集めるのは絶望的な状況のため、高体連は可能な限りの経費削減を模索している。例年は、冷房設備がない体育館には仮設の空調を入れることで対応してきたが、すでに冷房設備のある体育館を選んだ。予選と決勝を一本化するなどして試合数を減らして大会日程を短くする競技もある。
また、例年は全国の都道府県から審判員を派遣していたが、今回は近隣の自治体から審判員を集めて交通費を削減するかたちをとるという。さらにポスターやチラシの配布も抑える予定だ。
東京五輪のせいで、24年パリ&28年ロス五輪の人材の枯渇か
万が一、インターハイが開催されないと、それは日本スポーツ界にとって大きな“損失”となる。まずは選手たちのモチベーションが変わってくる。
インターハイは高校球児でいう「夏の甲子園」と同じ。憧れの舞台が取り上げられたら、選手たちはどんな気持ちで練習に向かうのだろうか。そして現在の高校2年生は進路にも大きく響いてくる。大学のスポーツ推薦では、「全国大会出場」「全国大会で●位以内」という条件がつくことが多い。インターハイが行われなくなると、その条件を満たすことができない可能性があるからだ。
「オリンピアンのほとんどがインターハイ経験者です。そういう意味では日本のスポーツを支えてきた大会でもあるかなと思います」(西塚事務局長)
インターハイに出られるのは、全競技で平均すると運動部員の2~3%。世界中の注目を浴びる東京五輪の裏で、高校生アスリートたちの夢舞台が危機的な状況にある。
高体連は今後、競技別のクラウドファンディングを計画しているという。東京五輪のチケットに外れた方々は、そのお金の一部を未来のオリンピアン候補たちに投資してみてはいかがだろうか。
2020年のインターハイを経験した高校生の中から、2024年パリ五輪、2028年ロス五輪に羽ばたくアスリートが絶対に出てくる。東京五輪の影響で、未来ある若者が犠牲になることだけは阻止しなければいけない。大人ができることは、可能性のかたまりである高校生たちのささやか夢をかなえることではないだろうか。