MGCで2位に入り、東京五輪のマラソン女子日本代表に内定した鈴木亜由子選手に関心が集まっている。多くの陸上エリートが私立の強豪校出身なのに対し、鈴木は大学までずっと公立。しかも大学は名古屋大学経済学部で、文武両道を地で行く。中学時代から取材している酒井政人氏は「コーチに完全に依存せず、自分の頭で考えながらコツコツやるタイプ。東京五輪のメダル候補です」という――。
写真=アフロスポーツ
マラソングランドチャンピオンシップ で女子のレースで2位に入り、東京五輪代表に内定した鈴木亜由子選手

MGC出場者49人で唯一の国立大学出身の「頭のいいランナー」

9月15日に行われたマラソングランドチャンピオンシップ(以下、MGC)で、東京五輪の男女マラソン日本代表4人が内定した。そのなかで異質な輝きを放つ選手がいる。女子のレースで2位に入った鈴木亜由子(日本郵政グループ)だ。

優勝した前田穂南(天満屋)が20km過ぎに抜け出したレース。鈴木は単独2位をキープして、終盤は“笑顔”で駆け抜けた。40km地点で33秒差あった3位の小原怜(天満屋)に最後は4秒差まで猛追されたが、2時間29分02秒の2位でフィニッシュ。「2位以内」という内定条件を満たして、東京五輪を引き寄せた。

「まずは2位を確保できてホッとした気持ちです。笑っているように見えたかもしれませんが、私は苦しくなると口角が上がるんですよ。笑っているときは苦しいんだなと思ってください」

鈴木はレース後の会見でこう話し、メディア関係者も笑顔にさせた。

MGCは東京五輪のキップがかかるだけでなく、現在の日本における最高峰のレース。男子は34人、女子は15人がハイレベルな基準をクリアして出場資格を得た。そしてMGCファイナリストの「学歴」を見ると、日本陸上界、スポーツ界の縮図が見えてくる。

男子は大卒が31人で高卒が3人。出身校でいうと東洋大が最多5人で、青山学院大が4人、駒大が3人。東海大、上武大、国士館大、拓殖大が2人。早稲田大、京都産業大、日本大、山梨学大、明治大、中央大、順天堂大、麗澤大、國學院大、神奈川大、学習院大が各1人となる。

公務員ランナーからプロランナーに転向した川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)は学習院大卒だが、他は箱根駅伝の上位校をはじめ駅伝の強豪校ばかり。高卒は1割ほどしかいない。これが女子になると一変する。

女子は高卒が13人で大卒が2人。大卒のひとりは前田彩里(ダイハツ)で駅伝の強豪・佛教大だ。もうひとりが鈴木で名古屋大になる。